朝日新聞2012年4月14日夕刊掲載「働く人の法律相談」-試用期間中の遅刻で本採用拒否-(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

大型連休が終わり、新入社員の皆さんもいよいよ本格的に仕事に取り組み始める時期でしょう。しかし、学生時代の生活リズムが抜けず、試用期間中に遅刻などをして、本採用されるか不安だ、という方もいるのではないでしょうか。

試用期間は、採用面接などで会社が知ることができない労働者の能力などを、いったん職務に就かせて、判断することにその趣旨や目的があります。そのため、試用期間満了後の解雇(本採用拒否)は、普通の解雇よりも広い範囲で認められると言われます。

しかし、試用期間とはいえ、会社と労働者との労働契約は成立しています。労働者には、本採用されることへの期待もあります。

そこで、試用期間満了後の解雇は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合にのみ許されます。その解雇理由も、試用期間中における事情でなければなりません。採用面接での事情や、採用試験の成績などは、理由になりません。

ある裁判では、試用期間中の遅刻が他より多かったとして、労働者を解雇したことが有効かどうかが争われました。判決では、その労働者には反省すべき点があるものの、遅刻したのは交通事情や天候の影響がある▽遅刻は最大で5分▽遅刻に対し、会社は始末書の提出はおろか注意さえしていない▽無断欠勤は一度もない――などを理由に解雇を無効としました。

ただし、本採用後、会社から注意や指導を繰り返し受けたにもかかわらず、相変わらず遅刻が多ければ、普通の解雇とされる可能性もあります。社会人の自覚をもって、毎日を送ることが重要です。

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