1 ご自身・ご家族が逮捕・勾留されたら
突然、身に覚えの無いことで警察に逮捕されたら?あなたの大切なご家族が突然警察に逮捕されたら?刑事事件の当事者となるとき、それは人生の中でも最も衝撃的な出来事の一つです。
身に覚えの無いことで逮捕されたとしても、「無実なのだからすぐに釈放されるだろう」・・・そう思うかも知れませんが、身に覚えの無い事件で逮捕され、警察官や検察官の追及に耐えきれずに、真実と異なる虚偽の自白をさせられてしまい、有罪判決を受けてしまうという悲劇は現実に起こっています。
また、犯罪を起こしてしまった人であっても、法律に基づいた適正な手続きを受ける権利は全ての人に保障されています。警察・検察という強大な力を持った国家権力にたった一人で立ち向かうことは、普通の人にはできません。
刑事弁護を通じて国民の権利を守ることは弁護士の最も重要な使命です。
ご自身やご家族が逮捕されてしまったときには、まずは弁護士にご相談下さい。
警察や検察などの捜査機関に身柄拘束されている状態は、法律上、「逮捕」とその後の段階の「勾留」に分かれます。
最初に警察から逮捕された場合、逮捕された日を含む3日間のうちに検察官から裁判所に対して、引き続き身柄を拘束することを求める勾留請求がなされます。
裁判官が様々な事情を考慮してその被疑者の身柄拘束を続けることが妥当であると考えた場合、勾留決定がされ、勾留の段階へ移ります(①)。
検察官がこれ以上身柄拘束を続ける必要はないと判断して勾留請求をしなかった場合や、裁判所が身柄拘束を続けるべきではないと考えて勾留請求を却下した場合には、釈放されます(②)。
勾留は原則として10日間ですが、検察官が裁判所に対して勾留延長請求をして、裁判所が勾留延長決定をした場合には、最長でさらに10日間身柄拘束の状態が続くことになります(③)。
勾留期間が満期になる前に検察官はその被疑者を起訴するかどうか決めます。
検察官が裁判にかけるべきと考えた場合には起訴して(④)、裁判にかける必要がないと考えた場合などには不起訴とし、釈放することもあります(⑤)
また、弁護士などを通じて勾留決定に対して不服を申し立てるなど身柄拘束が不当だと争い、裁判所がそれを認めてくれれば、勾留期間の途中で釈放されることもあります(⑤)。
2 取り調べを受ける際の心得
- 黙秘権
憲法38条1項は、「何人(なんぴと)も、自己に不利益な供述を強要されない」と定め、黙秘権を保障しています。また、刑事訴訟法198条2項は、「取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない」と定めています。逮捕・勾留された人は、取調官(警察官や検察官)から供述を迫られたとしても、黙秘権を行使し、供述を拒否することができます。一切の質問に対して、何も答えず、黙っていてもかまわないというのが黙秘権です。国家権力が常に正しいわけではありません。歴史的にみても、国家権力により無実の人が無理やりに嘘の自白をさせられて、処罰されてしまうことが後を絶ちませんでした。黙秘権は、そのような反省から、世界中の近代国家で当然のこととして認められているものです。黙秘権を行使することは、正当な権利の行使です。 - 署名・押印(指印)の拒否
取り調べを受けると、捜査官(警察官・検察官)は、供述調書を作ります。供述調書は、実際には、捜査官が取り調べで聞いたことを捜査官の言葉でまとめたものです。しかし、この供述調書は、「私は、○○しました」というように、まるで、あなた自身が書いたかのような文章になっています。しかし、供述調書は、捜査官の考えるストーリーに沿って書かれてしまうことがほとんどであり、あなたが話したことがそのまま記載されているわけではありません。しかも、この供述調書に、署名・押印(指印)してしまうと、裁判では、その供述調書は捜査官の前で、あなたが話したこととして扱われてしまいます。それを後から捜査官に無理矢理書かれてしまった嘘の内容だと主張しても、裁判でそのことを認めてもらうのは、とても難しくなります。刑事訴訟法198条5条は、「被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない」と明文で規定しています。つまり、供述調書への署名押印(指印)をする義務は無く、署名押印(指印)を拒否する権利は法律で認められているのです。取り調べの現場では、供述調書への署名押印(指印)を捜査官から強く求められます。そして、権利を主張したときに、「反省していない」と罵声を浴びせられることもあります。しかし、「反省」と捜査官の作文を自分の言葉として扱わせることは全く関係がありません。自分の話したことのとおりに書かれていると思う内容の供述調書でも、あなたは捜査や裁判の専門家ではありません。供述調書に混ぜられた捜査官の解釈による表現が、裁判で思いがけなく不利に働くこともあります。供述調書に署名押印(指印)することは義務ではありません。供述調書に署名押印(指印)するべきかについては、捜査や裁判の専門家ではないあなた自身だけで判断せずに、弁護人の助言を得ながら判断していくべきです。
- 警察・検察の作文ではなく、あなたの言い分であること
弁護人の助言も得た結果、供述調書に署名押印(指印)することに決めたとします。その場合であっても、供述調書の内容は、よく確認する必要があります。供述調書は、あなたが起訴される(裁判にかけられる)かどうか、裁判で有罪になるかどうか、有罪だとしてどのような刑の重さになるかを判断するための証拠になります。あなたの言っていることと少しでも違うことがあれば、訂正を求めて下さい。あなたが求めるとおりに訂正してもらえない場合には、けっして供述調書に署名押印(指印)してはいけません。また供述調書の中に、あなたの理解できない言葉が入っていたならば、必ず、あなたの理解できる言葉にするよう訂正を求めて下さい。「同じ意味だから」と捜査官に言われて、あなたが理解できない言葉の書かれた供述調書に署名押印(指印)することは、絶対にしてはいけません。
3 弁護士を通しての被害弁償を
- 被害弁償の必要性
自分がやったことに間違いない犯罪であったとしても、弁護人が必要無いわけではありません。特に、被害者がいる事件では、被害者に対して謝罪や被害弁償をすることが必要です。また、被害者の告訴が無ければ裁判にかけられない親告罪と呼ばれる犯罪もあります。特に、親告罪では、被害者との間で示談が成立して告訴を取り下げてもらえれば、裁判にかけられずに釈放されることになります。親告罪以外の犯罪であっても、被害者との間に示談が成立していれば、起訴されずに釈放される確率は高くなります。また、仮に起訴されて裁判にかけられても、被害弁償ができていれば、被害弁償ができていない場合と比較して刑の重さは一般には軽くなる傾向があります。そのため、刑事事件では、早期に被害弁償を実現することは重要です。また、適正な被害弁償を行うことは、犯罪の被害に遭われた方にとっても、少しでも被害を回復していただくことにつながります。 - 被害弁償の難しさ
もしあなたが犯罪の被害に遭われた立場だとしたら、加害者本人や加害者の関係者に自分の連絡先を知られることをどう思うでしょうか?弁償を受けたいと考えたとしても、加害者に連絡先等を知られてたら何かされるのではないかと不安になることは、ごく自然なことだと思います。被害弁償の一つ目の難しさは、犯罪の被害に遭われて恐怖心や心理的負担を感じておられる被害者の方と、直接連絡を取ることが難しいことです。特に逮捕・勾留されて自分自身で動くことのできない方が被害弁償を進めていくためには、弁護人の援助が不可欠です。また、被害者の方のお気持ちに配慮しながら、適正な被害弁償を進めていくことは、とても難しいことです。被害者の方への対応の仕方を間違えれば、かえって被害者の処罰感情を高めてしまうことになりかねません。被害弁償を早期に行っていくためには、裁判にかけられる前の捜査段階から弁護人を選任することが望ましいと言えます。
4 起訴されてしまったら-保釈制度とは
捜査を終えて、裁判所に起訴されてしまったとします。勾留されている状態で起訴された場合、起訴後も勾留が続きます。しかし、起訴後には、保釈という制度があります。
保釈とは、起訴後に保釈保証金を納めて勾留を解く制度です。保釈が認められた場合、裁判の期日にきちんと出頭して裁判が終われば、保釈保証金は返還されます。逆に、裁判に行かなかったり、逃げてしまったり、保釈の条件に違反することを行えば、保釈保証金は没取されます。
保釈の手続きを進めるうえでも、弁護人にご相談下さい。
5 裁判員裁判
故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件や、法定刑に死刑・無期懲役・禁錮の刑がある重大事件については、裁判員裁判が行われます。裁判員裁判で有効な弁護を受けるためには、裁判員裁判に対応できる弁護技術、弁護戦略が必要です。
当事務所には、裁判員裁判に対応できる弁護士もおりますので、ぜひご相談下さい。
6 刑事事件の相談と解決事例
刑事事件についても、まずはご相談ください。