朝日新聞2009年1月19日夕刊掲載「働く人の法律相談」-有期雇用の中途解約(上)-(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

 自動車会社で働く期間工のAさんは08年11月17日、「12月26日で解雇する」と通告されました。本来の契約は09年4月末まで。しかし、会社側は「需要が急に冷え込み、生産計画を大きく見直すことになった」として、Aさんを含む期間工全員に中途解雇を言い渡しました。

 Aさんに対抗手段はないのでしょうか。労働契約法では、「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」(17条1項)とし、期間の定めのある労働者の解雇については、期間の定めのない労働者の解雇より厳格に定めています。

 契約期間終了前に解雇しなければならない事情があるかどうかがポイント。なければ解雇は無効、ということになります。

 02年には、3カ月の契約期間途中で解雇されたパート労働者が会社を訴えた裁判で、パート側が勝訴しました。裁判所は、パートの平均給与は12万~14万5千円で、「企業規模などからすると、業績悪化が急激であっても、3カ月の契約期間の終了を待つことなく解雇せねばならないほど、予想外かつやむを得ない事態が発生したとは認められない」と判断しました。

 また、Aさんの解雇は、会社側の都合で契約を解消する「整理解雇」にあたります。整理解雇が有効であるには①人員削減の必要性がある②解雇回避の義務が尽くされている③解雇にあたり合理的な人選がされている④事前の説明・協議義務を会社が果たしている、という4要件を満たすことが基本的に必要、とされています。

 解雇を言い渡された後、Aさんは仲間と労働組合を結成。解雇回避義務を尽くしていないなどを理由に、解雇を撤回して契約期間分の賃金を支払うよう求める裁判を起こしています。

 雇用に対する企業の「社会的責任」については、労働契約法3条4項が「使用者は労働契約を順守」しなければならないと定めています。企業には契約を更新した責任があるのです。その責任を勝手に放棄させないよう、労働者が声を上げ続ける必要があります。

●ここがツボ●

・やむをえない事由のない中途解雇は無効
・会社都合の「整理解雇」は4要件が基本
・企業には雇用契約を更新した責任がある

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