コラムコラム-佐渡島啓弁護士

朝日新聞2011年1月24日夕刊掲載「働く人の法律相談」-職場内でいじめを受けたら?-(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

相手の行動 メモ、録音で証拠集めを

 職場で特定の人に対して恫喝(どうかつ)する、無視する、いやがらせをするなどといった「職場のいじめ」が、最近増えているようです。不況下での経費や人員の削減で、職場の余裕が失われたことが影響しているのではないかとの指摘もあります。

 もし、職場でそんないじめにあったら、どう対処したらいいのでしょうか。

 まず問題となるのは、いじめが上司や同僚の個人的感情や利害によって行われているのか、経営側が人員削減などを狙って意識的に行っているのかということです。個人的感情によるのならば、いじめに関与していない上司や同僚に相談したり、社内の相談窓口や労働組合を利用することなどが考えられます。

 それでも解決できなかったり、そもそも経営側が意識的に行っていたりした場合は、社外での解決を検討することになりますが,例えば,労働局のあっせん制度を利用して,話し合いでの解決を求めることもできます。1人でも加入できるユニオンや弁護士など専門家のアドバイスを受けるのもいいでしょう。

 ひどいいじめを受けた場合は、労働審判や訴訟により、精神的苦痛に対する慰謝料などの損害賠償を会社に請求することもできます。会社は職場の安全と社員の健康に配慮する義務(安全配慮義務)があるからです。いじめた本人を被告として不法行為責任を追及する損害賠償請求訴訟を行うことも可能です。

 そのためには、いじめを受けた証拠を示さなければなりません。つらい毎日でしょうが、いじめにかかわる人の言葉や態度について,その日時や場所も含めて具体的にメモをとっておくことをお勧めします。ICレコーダーなどで録音しておくのもいいでしょう。もし暴力を受けたら、医療機関で診断書をもらったり傷跡の写真を撮っておいたりすることも大切です。

 精神的に追いつめられてうつ病など精神疾患を発症するケースも少なくありません。そんな場合は、医療機関を受診した際のカルテの記載が証拠となることもあります。上司によるひどい叱責(しっせき)などにより精神疾患になった場合は、労災と認められることもあります。

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