裁判員裁判について(弁護士 谷川 生子)

弁護士 谷川 生子

 今年の2月、初めて裁判員裁判を経験しました。裁判員の反応を様々に思い描きつつ、弁護人の主張を伝えようと模索しましたが、結論としては、弁護人の主張は退けられました。後悔や反省の念とともに、刑事裁判は、人の一生を左右すると改めて感じさせられた事件です。

 裁判員の選任手続に呼び出された人々は、皆緊張の面持ちで、重圧を感じているようでした。確かに、人の一生を左右するようなことに関わりたくない、というのは、一般の人々の素直な気持ちでしょう。しかし、国民が裁判に参加することで、これまで目を向けられなかった「刑事裁判のその後」にライトが当てられるようになるのではないか、と感じています。裁判官、検察官、弁護士でさえも、刑事手続の終了と共に、被告人との関係が切れてしまうことがほとんどであり、特に裁判官は、具体的にその後被告人がどうなるのかを知らずにいることも多かったと思います。

 それに対し、裁判員は、被告人を前に、自分の出した結論により、この人はこの先どうなるのだろう、と考えます。また、考えて欲しいと思い、公判では、刑務所への再入者率、約6割の犯罪が再犯によるものである事実などに関する客観的な資料を用い、刑務所が十分に機能していない実態を示しました。

 私自身、今回初めて知ったことは多く、不勉強を反省しましたし、裁判員裁判が、法曹三者に何らかの意識の変化をもたらすことは間違いないように思います。

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