憲法ミュージカルをご記憶でしょうか(弁護士 牧野 丘)

弁護士 牧野 丘

 憲法ミュージカルをご記憶でしょうか。93年から10年間、埼玉で続けました。「憲法を分かりやすく」とか、「憲法礼賛」とは少し違い、「現実の出来事を憲法の視点で斬る」がコンセプトでした。憲法を護ろうと決めている人たちだけで創る運動ではなく、そうとは決めていない人々も一緒に、憲法がいかなる生命力を持っているのかを考えたい、事が原点でした。ですから、劇中に「憲法」の言葉が登場することは稀ですし、我々は、いかにシナリオの世界を高度に実現するか、に傾注していました。準備の過程で行われる学習も、作品の世界を表現するためという位置づけでした。護憲かどうかは、演じた人々、観た人々が自らの感性に照らして判断してもらいたいと考えたわけです。

 この企画が我々の手から離れたあと、なんと山梨・三多摩・大阪へと飛び火しました。昨年は3地域で同じ芝居を同時に演じるという壮大な実験にも取り組まれるに至りました。どこも超満員の盛況でした。実現した皆さんのご苦労には、我々の頃をはるかに凌駕するものがあったと思います。3カ所で観ましたが、同じ演出なのに三者三様の違いが、とても面白かったです。県民性の違いでしょうか。同じことに取り組みながら表現が異なり、それが作品の厚みを醸し出す。そのような違いに気づかせてくれ、面白さに変えることのできる芸術には私のような凡人の想像を超える無限の力があるのだ、と今更ながら感じた次第です。

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