そのあるところのものになる(弁護士 猪股 正)

 先日、早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也教授のゼミの学生のみなさんが、当事務所を訪問され、特別講義の機会をいただきました。貧困や震災の現場の取組などをお話ししながら、若者の生きづらさ、今後の社会の方向性などについて考え、みなさんの意見もお聞きでき、私にとって大切な時間となりました。
 国連の世界幸福度報告書2019年版によれば、日本の幸福度ランキングは、156か国中58位であり、過去最低にまで順位を下げています。幸福度を判断する際の6つの指標でみると、社会的支援50位、人生の選択の自由度64位、社会的寛容さ92位となっており、日本は、人生の選択が困難で、不寛容な社会へと突き進んでいるようです。
 「いきいきと、堂々と歩いて行くためには、どうしてもひとは自己に忠実に『そのあるところのものになる』必要がある。」。先が見えず、生きることの難しさを感じていた学生のころに読んだ神谷美恵子さんの著書「生きがいについて」の一文です。
 幸福度ランキングの1位はフィンランド、2位はデンマーク…。北欧諸国が上位を占めています。私たちは、他国の実践に学び、この国のあり方を見直し、若者やこの社会に生きる人が、時には悩み立ち止まりながらも、自分らしい人生を選択して「そのあるところのものになる」ことができるよう、懐の広い寛容な社会を作っていく、今がそのときであると強く思うのです。

弁護士 猪 股  正

【関連情報】
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新版 きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記(日本戦没学生記念会 編)

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