コラムコラム-佐渡島啓弁護士

朝日新聞2011年12月12日夕刊掲載「働く人の法律相談」-職場のPCで私用メール許される?-(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

会社に損害与えなければ容認

最近では、社内外の人たちと1日何十通もの電子メールをやりとりするのも珍しくありません。仕事の合間にメールで同僚や友人を飲み会に誘ったり、仕事のグチをこぼしたり、ということも時にはあるでしょう。職場のパソコンで私用メールの交換は、どこまで許されるのでしょうか。
 会社が従業員を懲戒処分にする場合には、就業規則などに懲戒になる行為と懲戒の種類が規定されていることや、処分の重さが相当であることが必要です。
 多くの会社では、職務に専念する義務や、職場の規律を維持する義務などが従業員の服務規定に定められています。メールの私的使用禁止を明文化していない職場でも、それらの規定に反する恐れがあります。
 では、私用メールは一切禁止されるのでしょうか。
 過去の判例では「職務遂行の妨げとならず、会社の経済的負担もきわめて軽微な場合、外部からの連絡に適宜対応するため必要かつ合理的な限度の範囲内であれば、私用メールの送受信も基本的に妥当」とされています。つまり、仕事の邪魔にならず、経済的にも会社に迷惑をかけない程度であれば許される、ということです。
 ある専門学校の男性教員は職場のメールアドレスを使って出会い系サイトに登録し、知り合った女性たちと5年間でメール800通を送受信していたため、懲戒解雇されました。男性は解雇は不当だとして、裁判に訴えました。
 地裁は、職務に専念しておらず、教職員としての適格性に疑問があり、懲戒になる行為に当たるとしながらも、「授業をおろそかにしておらず、パソコン用の規定もなかった」として解雇は重すぎると判断。しかし高裁は、送信元が学校とわかるアドレスでメールをやりとりして学校の名誉を傷つけたことを重視し、「解雇は相当」としました。
 一方、使用者側が従業員のメールを調査する際にはその手法が問われます。業務上の必要性がなく、あるいはその立場にないのに監視すれば、プライバシー権の侵害にあたることがあります。

このページを印刷