2025年10月5日、「市民の声を聞け!「『引き下げから底上げへ』10.5集会 誰もが人間らしく安心して生きられる社会へ~社会保障を、幅広く、底上げせよ!」を開催しました(いのちと暮らしを守る なんでも相談会実行委員会・いのちのとりで裁判全国アクション主催)。
実行委員会事務局長として、集会宣言を取りまとめましたので、ご紹介します。不幸を生み出し続ける社会システムを、連帯と協働の力で変えていきましょう。
次回の全国一斉なんでも相談会は、12月20日(土)10時~18時です。つながってください。
市民の声を聴け!「引き下げから底上げへ」10.5集会・集会宣言
憲法25条が保障する生存権が危機に瀕しています。全国の地域が連携して実施しているなんでも相談会には、追い詰められた人からの相談が寄せられ続けています。年金収入のみで預貯金を尽きていく不安に脅え医療費の負担に苦しむ高齢者。派遣などを転々とし低賃金で将来の不安を抱え、奨学金という借金の負担に苦しむ若い世代。ダブルワーク・トリプルワークで子どもを支え心身ともにギリギリのシングルマザー。仮放免で仕事ができず子どもの学費を払えない外国籍の人。止まらない物価高が追い打ちをかけ、電気代を節約し食費を削り熱中症や栄養失調のリスクにさらされている人。今の生活保護費では生活できない生活保護利用の人。全国各地で多くの幅広い層の人が生存を脅かされており、そして、多くの人が一人で問題を抱えて孤立し、声をあげられずにいます。
こうした現状は、「失われた30年」、正規雇用を非正規雇用に置き換える政策や、医療・介護、保育・教育、年金、生活保護などの社会保障制度の削減や自己負担増が進められてきたことが大きな要因です。特に、他の社会保障の基盤ともいえる生活保護制度をターゲットにし、バッシングを煽り、社会保障削減の「突破口」として2013年に生活保護基準を引き下げたことによる影響は極めて深刻であり、就学援助制度など他の社会保障制度にも影響が及び、直接、間接に、この国の社会保障水準を低下させています。
このような中で、全国各地の市民や弁護団の長年の奮闘の積み重ねにより、本年6月27日、最高裁判所は、生活保護基準引き下げの違法性を認め、引き下げ処分の取消を命じる歴史的な判決を言い渡しました。この判決は、憲法25条が保障する生存権を司法が擁護し、希望と勇気をもたらす画期的なものです。
ところが、厚生労働省の対応は極めて不誠実であり、最高裁判決後、未だに謝罪さえなく、今後の対応を一方的に決めた専門家委員会に委ねるなど、判決の意義を矮小化し、当事者を軽視、愚弄する姿勢を続けており、法治国家の基盤を揺るがす事態となっています。
そこで、本日の集会にあたり、国の対応に強く抗議し、国や自治体に対し次のことを求めます。
1 最高裁判決の意義を正面から受け止め、真摯な謝罪と違法な引き下げによって生じた被害の全面回復を直ちに行うこと
2 生活保護基準引き下げの影響が波及した他の社会保障制度の是正を速やかに行うこと
3 最後のセーフティネットである生活保護基準を、人間としての尊厳ある生活を保障する水準まで引き上げ、生活保護法を権利性の明確な生活保障法に改正すること
4 誰もが人間らしく安心して生きられるよう、削減・自己負担増などによる社会保障の引き下げの流れを止め、医療・介護、保育・教育、年金、最低賃金などの社会保障水準を幅広く底上げすること
私たちは、バッシングなど分断と対立の罠に陥らず、個々の苦しみを社会全体の課題として捉え、誰もが人間らしく安心して生きられる社会へと転換するために、年齢や国籍、立場を超えて幅広く連帯、協働し、力を結集して進むことを宣言します。
2025年10月5日
市民の声を聞け!「引き下げから底上げへ」10.5集会参加者一同
(弁護士 猪股 正)

