コラムコラム-佐渡島啓弁護士

朝日新聞2010年8月23日夕刊掲載「働く人の法律相談」-懲役解雇、普通解雇とどう違う?-(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

最も重い懲戒処分 退職金ないなど影響深刻

 JR東日本の社員が先日、社員に貸与される「職務乗車証」などを悪用し、不正乗車(キセル)をしていたとして処分を受けた問題がありました。このうち一部の社員が懲戒解雇されました。

 そもそも懲戒解雇は普通解雇と何が違うのでしょうか。

 使用者と労働者は労働契約を結んだ関係にあり、いずれの側からも解約は可能です。使用者側からの解約が解雇になります。ただ、解雇が安易に認められては労働者の生活に与える影響が深刻になるため、客観的に合理的で、社会通念にてらして相当な理由のない解雇は無効とされます。

 これに対し、企業秩序を維持する観点から、労働契約関係に基づいて使用者は懲戒権を持っています。懲戒解雇は通常、最も重い懲戒処分。労働者は、退職金が支給されなかったり、経歴に傷をつけて再就職が難しくなったりするなど、普通解雇にも増して深刻な事態になりかねません。

 そのため、懲戒解雇が有効となるには、就業規則などに懲戒になる事由及び懲戒の種類が規定されている▽規定が労働者に周知されている▽規定に該当する懲戒事由が存在する▽処分の重さが相当である-といった要件がさらに必要です。

 冒頭のキセル問題を例にすれば、解雇という処分が重いのではないかと争う場合は処分の重さの相当性が問題。キセルの事実を否認して争う場合は、懲戒規定に該当する事実の存在が問題となります。

 懲戒事由の存在が争われたケースでは、トラック運転手が髪の毛を黄色に染めて業務していたところ、「素行不良にして…社内の風紀秩序を乱した」「業務上の指示、命令に従わなかった」などの懲戒規定に当たるとして、懲戒解雇された事例があります。しかし裁判所は、髪の色や形、容姿、服装など労働者の人格や自由に関する事項に対する制約は、企業の円滑な運営において必要かつ合理的な範囲にとどまるため、髪の毛を黄色に染めたことは、懲戒規定に該当する事実にはならないと判断しました。

 懲戒規定に該当しそうな事実があったとしても、規定を合理的に解釈していくことが必要です。疑問がある場合は弁護士に相談してください。

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