原発と派遣切り(弁護士 猪股 正)

弁護士 猪股 正

 埼玉県が福島第1原発からの避難者をさいたまスーパーアリーナに最大5000人まで収容することを発表したことを受けて、反貧困ネットワーク埼玉のメンバーを中心に、3月17日、急遽、震災支援ネットワーク埼玉を立ち上げた。翌18日からアリーナ内での取組を開始し、相談件数は、12日間で、生活・法律相談、福祉相談、こころの相談、女性相談など合計1349件にのぼり、参加した支援者は、延べ830人を超えた。急ごしらえではあったが、このような活動が可能になったのは、リーマンショック後、派遣切りの横行などによって仕事と住居を喪失する人が続出するという事態を受けて、様々なメンバーの連携による生活や住居の支援活動を継続してきたからだった。

 原発と派遣切り。これらによって、仕事、住まい、生きがいなど様々なものを喪失した人たち。この2つの人災の背景には同じものがあるのではないか。いったい、私たちは何を目指してきたのか。企業の利益や経済の発展に偏り、人間の尊厳を冒す社会を作ってしまったのではないか。経済は人間のためのものだ。経済が人間を支配する社会は間違っている。真の復興は、経済の復興ではなく、人間の生存、人間の尊厳の復興だ。この震災・原発による大災害を機に、一人ひとりの尊厳が守られ、誰もが人間らしく働き生活できる社会になるよう、支え合いや連帯の意識が広がっている今こそ、私たち一人ひとりが力を尽くすときだと思う。

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