【コラム】過労死防止法施行10年 (弁護士 佐渡島啓)

過労死等防止対策推進法

過労死等防止対策推進法が施行されて10年が経過しました。この間、毎年11月の過労死等防止啓発月間には厚生労働省が主催し、私も所属する過労死弁護団も協力して、各都道府県でシンポジウムが開催されてきました。昨年の埼玉のシンポジウムでは、「若者の過労死問題を考える」という演題で長井偉訓氏(愛媛大学名誉教授)から基調講演がありました。

この講演では、若者の過労死・過労自殺の事例が多数紹介された上で、これらの事例の背景には、①コスト削減と人員整理による新卒者への十分な教育訓練の欠如と即戦力化、②仕事量に対する過小な要員と支援体制の欠如、③グローバル化による国際競争の激化と過大なノルマ・納期の設定があり、この結果としてストレスフルな仕事の増加や、職場でのハラスメントの蔓延状態が生じていると分析されていました。

過労死防止法施行後には、国の施策として過労死等防止の啓発授業を中学校や高校等でおこなうための講師派遣事業もおこなわれており、私も毎年、埼玉県内の高校等に講師として出向いています。これから社会に出ていく若者に対し、ハラスメントを含めた職場での困難な状態に出くわしたときの対処法について、頭の片隅にでも残るような授業を心がけたいと思います。

弁護士 佐渡島 啓

(事務所ニュース・2025年新年号掲載)

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