【コラム】労働局での調停手続(弁護士 佐渡島啓)

パワハラ防止措置(相談窓口の設置など)が全事業主で義務化されてから1年以上になりますが、パワハラに関する法律相談は残念ながら減っていません。
上司や同僚から被害を受けている、加害者として訴えられてしまったといった相談はもちろんですが、顧問先の会社などからは、社内で生じたパワハラトラブルにどう対処すべきか分からないといった相談も多く寄せられます。
この裏側の問題として、パワハラ被害を会社に申告したのに会社が適切に対処してくれないという相談もあります。

しかし、被害者がその会社で働き続けることを希望している場合には、弁護士を代理人に立ててまでして、会社と交渉したり、ましてや裁判をおこなうことには躊躇する方が少なくありません。
このような場合には、労働局に、会社との調停を申請することも解決のための選択肢として考えられます。

この調停手続は、原則として1回、2時間程度の期日で解決することを目指す制度で、私もこの調停の調停委員を務めています。
今年の春に私が担当した調停では、パワハラ被害を度々上司に訴えていたのに放置され続けたという事案で、調停手続に参加した会社の担当者に会社としての落ち度を説明して納得してもらい、一定の和解金を支払うことで調停を成立させることができました。

調停手続には強制力がないため、パワハラ被害者が調停を申請しても会社が手続に参加しない、あるいは、調停手続に参加しても調停成立には至らないケースもあるという限界はありますが、もっと広くこの制度を皆さんに知っていただき、いざというときには利用を検討してもらいたいと思います。

弁護士 佐渡島 啓

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)

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