遠回りくらいがちょうどいい(弁護士 猪股 正)

「学費の負担をかけ何のために大学に…親に迷惑をかけているだけ。世の中に自分がいてもいなくてもあまり変わらないんじゃないか。自分がいる意味、あるのかなと思う。」。スウェーデンで出会った日本の大学2年生の言葉。

先進7か国の国際比較で、自分の力で社会を変えられると考える若者が最も少ない国、将来への希望を持てない若者が最も多い国、日本(内閣府平成25年調査)。若者の投票率は30%台。生まれた家の豊かさで大学まで行けるかが決まる理不尽。厳しい競争を強いられ、勝ち組に入らなければ給与は低いままで、家族を持つことも難しい。失敗したら、やり直しが効かない怖さ。だから、自分とは何か、何のために生きるのか、試行錯誤をしながら、自分の価値を見出すなんて忘れた方がいいかもしれない、今を生きることを踏みにじる国、日本。

苦闘しつつ成人へと移行する若者に、かけがえのない価値があると認め、若者の社会への影響力を大切にし、やり直しができる国、スウェーデン。大学まで学費は無料、大学入学の平均年齢は25歳、高校卒業後、進路を決めるのに2、3年働きながら試行錯誤する。戦禍のボスニア・ヘルツェゴビナから逃れてきた5歳の難民の女の子にも機会が開かれ、成長して27歳で国会議員になれる国。総選挙に合わせ、中学生、高校生も、本物の候補者に投票する模擬選挙を行うなど、民主主義を育て、若者の投票率は80%を超える。民主主義に支えられ、平等を重視する、福祉と連帯の国。

「人は誰でも平等で やり直せるさ 今からだって 歯の浮くような綺麗事だけれど 生まれたからには幸せに 闘ってみるか 遅くはないさ」(斉藤和義「遺伝」より)。

弁護士 猪 股  正

(日弁連人権擁護大会等について)
2018年10月4日(木)、青森で、日弁連の人権擁護大会が開催されます。猪股は、「若者の生きづらさ」をテーマにした第3分科会の実行委員です。人権擁護大会に向けての調査活動のため、2018年6月9日から17日までスウェーデンを訪問しました。上記の記事は、埼玉総合法律事務所事務所ニュース2018年夏号からの転載です。

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