共生(弁護士 牧野 丘)

弁護士 牧野 丘

 昨年5月の憲法ミュージカル「キジムナー」の中で語られているのですが、植物の「花」が誕生したのは、恐竜の時代よりもあとだそうです。花が生まれ、蜜を持ち、その蜜を求めて虫が集まる。おいしい蜜を吸ってお腹を満たした虫は花から花へ飛び回って、花粉を体にまとい、草木が繁殖します。「共生」です。「花」が生まれる前にこの世の主だった恐竜たちは、生きるために植物を食べますが、植物の生存には貢献しません。「食い尽くし」の世界。

 私たちの世界は、花の誕生により、「食い尽くし」の世界から「共生」の世界に生まれ変わり、生命の循環を旨としました。

しかし、今、「共生」とは真逆の「弱肉強食」「分断」「差別」がわが国を含む世界を覆う勢いです。約7年前に経験した大震災のとき、わが国では「絆」という言葉があれだけはやったのに。

 「共生」も「弱肉強食」や「分断」も、実は、両方とも「生存」のための手段です。私たち人間が選択するべきはどちらなのか。またその選択を全うするためにはどうしたら良いのか・・・。地球の歴史では既に決着がついている話ですが。

 私たちの日本国憲法は、「共生」という理念が全体に練り込まれていると考えています。ですが、「共生」は決して甘い理想などではありません。人類の生存に欠くことのできないもので、それがゆえに時に我慢や忍耐を伴います。この1年、憲法のことを深めてみませんか。

image_printこのページを印刷
シェアをお願いいたします。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次