国家が事実を消す時代(弁護士 猪股 正)

弁護士 猪股 正

ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の遺作「残像」が6月から公開されています。
2013年12月6日、特定秘密保護法が強行採決された晩、ワイダ監督の代表作の一つ「カティンの森」がテレビ放映されました。

第2次大戦下、ポーランドは、ドイツとソ連の両方から侵略され分割占領され、ソ連の捕虜となったポーランド人将校1万数千人がカティンで惨殺されました。穴埋めされていた死体は後頭部から銃弾を撃ち込まれていました。
終戦後、ポーランドは、ソ連の支配下におかれ、カティンの森事件について語ることはタブーとされ、信念に基づき真実を語ろうとする者は次々と弾圧されました。
ソ連は、ナチスドイツの仕業だとしていましたが、1990年、グラスノスチ(情報公開)の流れの中で、機密文書の存在も確認され、ソ連は、スターリンの犯罪であることをようやく認めるに至りました。
戦後45年もの間、真実が封印され続けたわけです。

今、日本では、政権は、不都合な事実を隠し、あるものをないと断言し、真実を語ろうとする人には汚名を着せ、良心を持つ人も萎縮し真実を語れない状況が生まれています。
そして、政権は、本年(2017年)6月15日、犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」法案を強行採決により成立させ、国民を監視し処罰できる体制を強化しました。

過去の「残像」が次第に現実へと蘇りつつある今、自由と民主主義、平和が破壊されてしまうことのないよう、所員一同、皆様と共に、がんばりたいと思います。

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