【コラム】アザミの花をいつも心に (弁護士 猪 股  正)

アザミの花

 京大で、錦織成史教授のゼミで民法を学んだ。この春、錦織先生の傘寿をお祝いする会の案内が届いた。山岳部が生活の中心で名ばかりの法学部生で未熟だった当時の自分を思うと、参加してよいものかどうか迷った。
 同時に、錦織先生にお会いして、きちんとお礼を申し上げたいと強く思った。苦しさと不安で押しつぶされそうな日々だったが、錦織先生は、私に、山へ行こうと声をかけゼミの山登り企画を任せてくれた。君には君の良さがあると励まされたように感じ、その後もずっと心に残り続けた。
 30年の時を超えてお会いした錦織先生は、昔のままの優しさと強さで、お元気だった。会の最後にアザミで彩られた花束を贈られ元ゼミ生全員に語りかけた。「この花束の主役はアザミです。私は真っ直ぐに立つアザミが好きで大切に思っている。アザミはロートリンゲン(アルザスロレーヌ地方)にあったロレーヌ公国を象徴する花。“誇り高き抵抗”“独立不羈”の象徴だ。今は人間が独立するのが極めて困難な時代になっている。給付金のように金を餌に人間を操る。そんなものに成り下がってはならない。法学部で一番大事なことは、人間には、ひとり1人異なる人格があり、ひとりの人間を見つめ、その中にあるものを見出し、それを尊重し、思いやることで、それが人を信じる基盤になる。それを身近な人に伝えられたら、その人を生かすことになる。そして周りの人に同じことを返していくことができるようになる。人は自分より弱い人にどう対するかで人格がわかる。」
 ゼミ生時代に、錦織先生が私に投げかけてくれたことが、編み込まれた糸のように、自分が歩んできた今までの道のりを作っていると感じ、感謝と感動で涙が溢れた。真っ直ぐに立つアザミの花をいつも心に、生きていきたいと思う。

弁護士 猪股 正

(事務所ニュース・2025年夏号掲載)

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