団藤重光先生を偲ぶ(弁護士 宮澤 洋夫)

弁護士 宮澤 洋夫

団藤先生は去る6月25日、逝去された。私共が司法試験に挑戦していた頃、刑法学会を二分していた小野清一郎先生の「応報刑」論、木村亀二先生の「教育刑」論に対して、人格形成責任を問う「人格刑」論を展開され、平野龍一先生の刑事訴訟の「弾劾的捜査」論と相俟って刑事法学界に画期的変化をもたらされた。

団藤先生は「最高裁判事」(74~83年)に就任されて、衆参両院の議員定数訴訟では「一票の格差」が拡大することに警鐘を鳴らす意見を表明し、大阪空港騒音訴訟では飛行差止を却下した多数意見に対し「住民の健康と生活環境を侵害している」と反対意見を表明する等リベラルな対処をされていた。
他方、「疑わしきは被告人の利益」の鉄則を再審に適用して再審の門戸を広げた「白鳥決定」に関与し、「名張」毒殺事件にも関与されたが、それを契機に「死刑廃止論」に転じられた。

退官後は死刑廃止運動に参加され、「死刑廃止論」(91年)を出版され「刑罰なき社会」を問うたが、1995年、多事に亘る刑事法学への貢献により「文化勲章」を授与された。

関東弁護士会連合会は平成7(96)年度司法シンポジウムを「死刑廃止」をテーマに開催した。
団藤先生の「死刑廃止論」はもとより、「欧米諸国の資料・文献」等内外の資料・現地視察の結果も反映された。
翌平成8年の“園遊会”で東宮参与に就任されていた団藤先生にお会いした際、「この20年間で死刑廃止国と存置国は逆転したが、“関弁連”始め法律家の皆様の活動に勇気づけられている」と述べられたことが甦る。

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