埼玉総合法律事務所

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コラム-伊須慎一郎弁護士

先輩たちの姿を見ながら(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

 昨年6月から、いわゆる戦争法が憲法9条に違反するという国家賠償請求訴訟の代理人をしています。原告は500人を超えています。法律を作ったこと自体を憲法違反だと争う訴訟で、なかなか難しい裁判です。

 その中でも20代の若い弁護士から80代の大先輩弁護士が、違憲判断を求め、時には熱く(いつも熱いかもしれません)議論を重ねています。

 鈴木経夫先生(元裁判官)は、数年前の新年会で何としても憲法9条を守りたいと仰っていましたが、83歳になられても、弁護団会議に参加されています。丸子警報機事件で賃金格差を是正する画期的な判断をされた北澤貞男先生(元裁判官)は、たった1人でも原告の皆さんの訴えを丁寧に聴き取って、裁判所に伝え続けています。私の妻がロースクールでお世話になった石塚章夫先生(元裁判官)は、権力を憲法で縛るという立憲主義が蔑ろにされていることに対し、裁判で争えないかと新たな問題提起をされています。佐々木新一先生は時々体調が芳しくなさそうなのですが、私が頼りないので毎回の会議に参加され、訴訟進行の舵取りをされます。中山福二先生も体調が優れませんが、私を見るたびに、会議に参加できないことに申し分けなさそうです。

 大先輩が裁判を通じて何とか憲法9条を守ろうとする姿を見て、私も微力ながら、この裁判に力を注いでいます。微力であっても諦めない取り組みこそが憲法9条を守ってきたと信じて。

国民投票運動に対する共謀罪悪用にひるまない(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

共謀罪が参議院の法務委員会の採決省略という異常な手続で成立しました。
安倍首相の念願「憲法9条破棄」にまた一歩近づいたということでしょうか。

来年12月には総選挙と同時に憲法改正国民投票が実施される情勢です。
憲法に自衛隊を明記すると、憲法9条2項の戦力不保持・交戦権否認を打ち消し、縛りがかからなくなります。

すると、日本が、アメリカに命じられ、南シナ海にまで自衛隊を派遣し、中国と対峙し、北朝鮮に対する先制攻撃を含めたミサイル装備等のために莫大な予算をつぎ込みます。
日本の軍需産業にとってはおいしい話です。

しかし、少子高齢社会により人口減少が避けられない日本で、これ以上防衛費が増えれば、国民生活が困窮することは必至です。

私は欲しがりません勝つまではの精神で、敵を見立てて息を潜めて生活するのはごめんです。

政治を私物化して何でもありの安倍政権を見ると、来年の国民投票に際し、「悪法」共謀罪が市民運動の弾圧に悪用される恐れがあります。

私は、自由にものが言える民主社会を持続するため、主権者である私たちが、萎縮せず、事実に基づく国民投票運動を通じて、憲法改悪を阻止することが重要だと考えます。

なみだと平和(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

国内が混乱すると、真っ先に被害に遭うのは決まって子ども、女性です。
大統領派と副大統領派が国内の権益を独占しようと争っている南スーダンは、(政府は認めていませんが)内戦状態となり、市民、民間人に対する殺人、性的暴行まで多発し、ルワンダの民族大虐殺に発展するのではないかと危惧されています。
政府は、南スーダンに陸上自衛隊を派遣し、憲法9条に違反する邦人保護のための駆け付け警護や宿営地共同防護の任務をさせることになりました。

真の狙いは、中国などと競い合って日本の企業がアフリカでの利権を確保するためですから帝国主義そのものです。
私は自衛隊員が帝国主義の犠牲にならないよう、また、間違っても自衛隊員が南スーダンの少年兵や市民に銃を向けることがないよう、自衛隊の南スーダンからの即時撤退を求めます。

事務所には、ギリシャで撮影されたなみだをうかべた少女のポスターを貼っています。
そのポスターを見る度に、愛媛で暮らす姪っ子たちの顔を思い浮かべ、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)を確立しなければという思いを強くしています。
暴力の連鎖が凄まじい勢いで広がっている中、諦めず、皆さんと一緒に憲法9条を守るための取り組みを続けていきたいと思います。

新安保法(=戦争法)違憲国家賠償請求訴訟に注目してください(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

2016年6月20日、埼玉県内で暮らす市民の皆さんが中心となって、さいたま地方裁判所に、今年3月29日に施行された新安保法の制定行為等によって、平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権を侵害され、精神的苦痛をこうむったとして国家賠償請求訴訟を提起しました。
原告は318名、訴訟代理人は104名(うち埼玉弁護士会会員は102名)にのぼります。

本件訴訟は、裁判手続の中で、①新安保法の集団的自衛権行使や後方支援活動に関わる規定等が一見明白に憲法9条に違反すること、②航空自衛隊イラク派遣事件で、違憲判断を下した名古屋高裁判決が示した平和的生存権の権利内容をさらに発展させること、③集団的自衛権の行使等を容認した閣議決定・新安保法案の提出・国会での強行採決という一連の行為によって、政府と国会が憲法改正手続の回避によって、憲法9条の規範を踏み越えたことは、国民投票権を含めて私たちが日本社会の平和のあり方を決める権利を侵害したという、これまで裁判で争われたことがない新たな論点等を含みます。

しかし、本件訴訟の意義はそれだけではありません。新安保法に基づき戦争をする国づくりが着々と進むと、私たちの普通の暮らしが徹底的に壊されてしまいます。
①時の政権への反対意見が言えなくなり、デモの規制や集会のための公共施設が借りられず、②教育に政治が介入し、子どもたちに国(一握りの権力者)のために血を流すことを教え込み、③抑止力を理由に中国との軍拡競争に巻き込まれ、5兆円を超えた防衛予算はどんどん増え、④法人税や富裕税に手を付けないまま、消費税はどんどん上がり、⑤防衛装備移転3原則により私たちの暮らしを守る税金が防衛産業に流れる一方で、社会保障や福祉は切り下げられ、⑥奨学金の返済に苦しむ若い労働者が危険な任務を課せられる自衛官となる等、私たちの命と生活が粗末にされる社会になってしまいます。
本件訴訟は、外国籍の方も含めた市民の皆さんと、日本がこのような社会に巻き戻されることを阻止するためのたたかいでもあります。注目してください。

自由を守るための希望とは?(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

2015年11月26日、埼玉弁護士会は、憲法学者の樋口陽一先生をお招きして、なぜ、個人が尊重される自由な社会が大事なのか、憲法の観点からご講演いただきました。樋口先生のお話しの中で印象に残った次の言葉があります。

「安全のために自由を犠牲にすると、自由だけでなく、安全も失うことになる」

「連帯を求めて孤立をおそれず」ではなく「個に徹しつつ連帯をおそれず」

「自由を守るための希望は、私(樋口先生)やあなた(伊須のこと)にある」

個人主義(自由)は、利己主義ではなく、1人1人の個人を大事にする多様性を認める社会であり、あらゆる格差や、弱者への容赦のない攻撃を許さないフェアな社会を築く土台になります。
その自由な社会を守るための希望が私自身にあるのだと樋口先生に教えていただき、何だか感動しました。
樋口先生、ありがとうございます。

マララ・ユスフザイさんと憲法9条を守る活動(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

マララさんがノーベル平和賞を受賞した際のスピーチを、みなさんは読まれたでしょうか。マララさんはタリバン支配下で学校に行くことが許されていませんでした。
しかし、マララさんは学校に行って学んで夢を叶えたかった。

マララさんには2つの選択肢がありました。
1つは「声を上げずに殺されること」、もう1つは「声を上げて殺されること」。

ご存知のとおり、マララさんは子供が教育を受ける権利を訴え、銃撃されます。それでもマララさんは教育を受けられない5700万人の子供のために声を上げ続けました。

候補となった日本国憲法9条は残念ながら受賞を逃しました。
しかし、私は、マララさんの権利を勝ち取るための勇気あるたたかいから声を上げ続けることの重要性を学びました。

私たち1人1人の力は微力ですが、力を合わせれば、憲法9条をなくして日本を普通の国にしようとする政府の企みも阻止できるはずです。みなさんと力を合わせて、おかしいことは、おかしいと言い続けたいと思っています。

今年も1年よろしくお願いします。

埼玉弁護士会 副会長就任にあたり(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

平成26年度埼玉弁護士会副会長を担当させていただくことになりました。修習期は55期です。

これまで、埼玉弁護士会の会務は、市民集会実行委員会に時々顔を出す程度でしたので、ほとんど会内の運営状況・実態を知らず、果たして副会長の重責が務まるのか心配でした。

しかし、執行部の先生方は、大倉会長を筆頭にみなさん、明るく、真面目な方ばかりですし、事務局のみなさんも河上事務局長を筆頭にみなさん頼りになりますので、大船に乗った気持ちでやっていこうと考えいています。

就任以来2ヶ月が経とうとしていますが、弁護士会は課題山積です。

集団的自衛権の行使を容認しようとする政府の動きに対し、弁護士会に何ができるのか、今年12月までに施行される予定の特定秘密保護法を廃止・無力化できるか、解雇自由社会・残業代ゼロ社会などの労働法制改悪の動きを止め、格差社会の是正を図る取り組み、政党を超えて国会議員の支援が広がっている司法修習生給費制復活の問題などは、様々な市民団体のみなさんなどと連携できるかどうかという問題があります。

また、弁護士業務の効率化を図るために23条照会制度の運用整備(理由のない回答拒否事案などへの対応)、弁護士会法律相談の拡充・充実、広報活動なども、担当委員会の先生方のご努力には頭の下がる思いです。

会内には約60の委員会がありますが、会員の先生方のお力をお借りして、課題に1つ1つ取り組みたいと思っています。何とか1年間頑張りたいと思いますので、1年間よろしくお願いします。

「伝説の裁判官」 吉田久大審院判事(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

私は、2013年11月17日、生まれて初めて、劇団の舞台を観ました。劇団俳優座が新宿紀伊国屋ホールで公演した「気骨の判決」です。
何となく手に取ったチラシに、戦前、大政翼賛会による翼賛選挙を、選挙妨害があったとして無効にした裁判官がいたという内容で、目を疑いました。
なぜなら、現憲法下においてすら、三権分立により内閣、国会から対等かつ独立し、法と良心に従って判断しなければならない最高裁判所が、議員定数不均衡問題について国会に遠慮する判断を繰り返したり、最高裁・下級審を問わず、企業の利益ばかり配慮し、非正規労働者に不利益を押し付ける不公正な判決ばかりで、裁判官に対する不信が募っていたからです。
チラシを見た瞬間、これは絶対観なければならないと、妻と一緒に新宿に出かけました。

昭和17年の衆議院議員選挙の際、東条英機首相の下、戦争に国民を総動員するための組織「翼賛政治体制協議会」から推薦されない候補(非推薦候補)に対する選挙妨害が全国で行われました。
それに対し、各地で選挙無効の訴訟が提起されましたが、日本全体が戦争に勝つことが一番大事だとされるなかで、昭和18年には大審院の他の民事部で次々と選挙有効の判決が出ました。
しかし、吉田判事は、選挙妨害があったとされる鹿児島に出張して200人近くの証人尋問を実施しました。
吉田判事は十分な審理を尽くしたうえで、政府の圧力、特高警察の監視、裁判所内部での圧力に屈せず、他の民事部の有効判決に追随することなく、法と正義に従い、昭和20年3月に選挙無効の判断を出したのです。

吉田久判事は、こう言っています。
「わたしは死んでもいい、裁判官が事件の調べに行って殺されるのは、あたかも軍人が戦地に臨んで弾に当たって死ぬと同じ事だ、悔ゆることはない。」
「私は、この判決をするにもいささかの政治理念には左右されなかった。もし、判決が時の政治理念に支えられてなされたとするならば、その判決は不純であり、死んでいると考える。」

私は、吉田久判事、「気骨の判決」(新潮新書)の著者NHKの記者清永聡さん、そして、劇団俳優座のみなさんに、勇気を頂き感謝しています。
吉田判事のような覚悟はできませんが、2014年もくじけず頑張らないといけないと決意しているところです。
今年もよろしくお願いします。

自民党「日本国憲法改正草案」の下で暮らすのはごめんです。(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

7月21日参議院選挙の結果は、憲法改正、原発再稼働、TPP、首切り自由の正社員制度などを推し進めようとする自民党が公明党と合わせて過半数の議席を獲得しました。

自民党改革草案を読む

ところで、みなさんは自民党が昨年4月に発表した「日本国憲法改正草案」と「日本国憲法改正草案Q&A」をご覧になりましたか?
私は最初に読んだ時に目を疑いました。
安倍首相・自民党は、自衛隊を「国防軍」という名実ともに立派な軍隊にして、日本をアメリカと一緒に戦争をする国にしたいようです。
戦争になったら国家のために従順に命を捧げる。日本を戦争する国に変えるためには、国民は元首である天皇を敬い、国旗・国歌「君が代」を尊重しなければなりません。教育の現場でも、今まで以上に国旗掲揚・国歌斉唱の押し付けが正当化され、横行します。それが安倍首相・自民党の考える「普通の国」なのだそうです。

そのような抑圧された社会の中でも一部の人は、政府のやっていることはおかしいと「戦争反対」、「原発再稼働反対」、「生活保護の切り下げ反対」などの集会やデモ行進を行います。政府は社会秩序(平穏な生活)に反する集会やデモだとレッテルを貼って、表現活動の自由を大幅に制限します。大規模なデモに発展した場合には、治安出動といって「国防軍」がわれわれ「国民」に銃を向ける危険すらあります(草案9条の2第3項)。まるで明治憲法に逆戻りで、私たち国民は国家の家来「臣民」ということになります。

これらの内容は自民党「憲法改正草案」のおそろしさのほんの一部です。

学習会の講師活動を開始

私は、私たち国民から平和な暮らしと人権を奪う自民党の「憲法改正草案」には反対です。

私が所属する自由法曹団埼玉支部には約100人の弁護士がいます。今年の2月から、市民団体のみなさんを対象に、憲法学習会の講師として無料で弁護士を派遣する講師活動を開始しました。この7月22日までの半年ほどで、なんと100件を超える学習会の講師依頼がありました。憲法学習会の講師は初めてという若手弁護士も20人を超えました。
もちろん、ベテラン弁護士も頑張っています。わたしたち埼玉総合法律事務所の弁護士も約40件の講師を担当しており、事務所内での改憲阻止の取り組み、結束も日増しに強くなっています。

参議院選挙は自民党の圧勝でしたが、みなさんと一緒に安倍首相・自民党が私たちに押し付けようとしている「戦争するための憲法」を許すことなく、現在の平和憲法を守りぬきたいと決意しています。

自由競争社会と人にやさしい共生社会(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

12月16日に衆議院議員総選挙・都知事選挙が行われます。選挙の結果はこの原稿を書いている現時点では分かりませんが、自由競争・自己責任を声高に叫ぶ勢力(=強い者が弱い者に邪魔されるのはおかしいという考え方)が多くの議席を獲得することを危惧します。例えば、橋下徹氏は最低賃金制の廃止をうたっていますが、最低賃金の規制がなくなれば、使用者と労働者は対等でないこと(圧倒的に使用者が強いこと)、現在の経済情勢の下、十分な雇用がないことなどからすると、年収200万円以下のワーキングプアを大幅に下回る酷い低賃金労働が蔓延することは目に見えています。

ところで、労働者の権利や生活を守るはずの裁判官の中にも自由競争・自己責任・契約自由の原則に大きな比重を置き、弱者の立場を顧みない人が増えているように感じます。職業安定法44条、労基法6条に違反する『偽装請負』を軽微な派遣法違反にすぎないと免責した松下PDP事件最高裁判決を構成した裁判官(その後、同判決に追随する裁判官)は、東京電力福島第一原発で命を削りながら除染作業に関わっている請負労働者(そのほとんどが偽装請負)が、危険手当までピンハネされている実態をどう思っているのでしょうか? 私は、違法な偽装請負・多重請負を許容し、原発労働者を含めた多くの偽装請負労働者にだけ不利益を負担させるような裁判所の価値判断が社会に受け入れられるはずがないと信じています。

社会は混迷期に入っていますが、憲法価値を活かし「人にやさしい共生の社会」を目指して新しい1年が始まります。

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