シビリアンコントロール機能せず(弁護士 伊須 慎一郎)

2019年4月に退任した河野克俊統合幕僚長(自衛隊制服組トップ)は、2014年12月に米軍高官と会談し、歴代の内閣法制局長官、最高裁長官・判事、多くの憲法学者が憲法9条に明確に違反すると指摘した集団的自衛権の行使を容認した平和安全法制整備法案が、未だ国会にすら提出(提出は2015年5月)されていない時点で、米軍高官に来年(2015年)の夏までには法案が成立する見込みだと説明しました。
このことがシビリアンコントロール(文民統制)等の点から問題になりました。
憲法66条2項は総理大臣・国務大臣が文民であることを定め、その目的は軍隊を文民のコントロール下に置き、軍隊が政治に介入することを防止することにあります。戦前、陸軍大臣・海軍大臣が現役武官(軍事に携わる役人)でなければならないとされ、軍隊が政治に介入する結果を踏まえると、政治部門と軍隊を分離することは、私たちの生活を守るためにも不可欠なことです。

ところが、河野統幕長は、米軍幹部に「与党の勝利により来年夏までには(法案の成立が)終了するものと考えている。」、「我々も集団的自衛権行使に関する閣議決定がなされたことから、改訂されたガイドラインには期待している。」と、自衛隊に憲法違反の任務が付与されることを期待していると述べました。
憲法尊重義務を負う安倍首相は、実力組織である自衛隊のトップである河野統幕長をコントロールしなければならない立場にありますが、蜜月関係にあった河野統幕長と一緒にアメリカの要望に沿って憲法違反の法律を作るために暴走したものとえいます。
そればかりか、河野統幕長は「オスプレイに関しての不安全性を煽るのは一部の活動家だけである」と発言しています。オスプレイ配備への反対・不安の声は、沖縄県民だけではなく、東村山市議会、佐賀県民(2017年11月世論調査で反対37.6%)、岩国市民、木更津市民等が反対や不安の声をあげていますので「活動家」との指摘は事実に反します。河野統幕長の敵視発言は、安倍首相によるシビリアンコントロールが全く効いていないということだけでなく、自衛隊のトップが反民主的な考えをもっていることを露呈するもので、非常におそろしいことです。

安倍首相は、自衛隊が違憲だと言われるのは自衛隊員が可愛そうだ等という理由で自衛隊を憲法に明記する憲法改正を目論んでいます。自衛隊が憲法に明記されれば、軍備増強の予算がさらに増大するだけでなく、自治体から防衛省・自衛隊に市民情報を提供することも拒めなくなり、賭命義務を負った自衛官が危険な任務に堂々と派遣され、家族との生活を奪われるかもしれません。自衛隊を憲法に明記することが、私たちや自衛官家族の生活をどのように変えてしまうのか、私たちは、しっかりと考えて、この夏の参議院選挙にのぞむことが大事だと考えます。

弁護士 伊須 慎一郎

 

(事務所ニュース・2019年夏号掲載)

 

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