【コラム】「選挙供託金制度は必要か?」(弁護士 鴨田譲)

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今年7月7日に実施された東京都知事選挙では、過去最多の56名が立候補したことでも話題になりました。これを受けて、候補者数が多すぎる、候補者数を絞るために選挙供託金の金額を引き上げるべきという意見も聞くようになりました。
選挙供託金とは、選挙の立候補の際に納めるお金で、得票数が一定以下の場合は没収となります。供託金の金額は選挙ごとに異なりますが、国会議員の選挙区選挙や都道府県知事選挙は300万円と法律で定められています。
しかし、OECD加盟国中約3分の2の国ではそもそも供託金制度が存在せず、存在する国でもその金額は10万円以下の国が多く、日本の300万円という金額は世界でも突出して高額な設定になっています。
選挙供託金の目的は、真に当選を争う意思のない候補者の濫立を防止する点にあると説明されています。
ここでは、①意思があり、資金がある人、②意思があり、資金がない人、③意思がなく、資金がある人、④意思がなく、資金がない人という4パターンが想定できます。
④の人に立候補させないという点では供託金制度はその目的に沿うのですが、本来防止すべき③の人は供託金制度では防止できませんし、他方、本来防止すべきでない②の人を防止することになり、これは憲法で保障される立候補の自由に対する過剰な規制といえます。
考え方としては、資金の有無にかかわらずまずは立候補の自由を確保した上で、ポスターや政見放送のルールなど自由で公正な選挙の妨げにならない選挙の実施方法が決められるべきということになります。

弁護士 鴨田 譲
(事務所ニュース・2024年夏号掲載)

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