【コラム】教えることは難しい(弁護士佐渡島啓)

この数年、埼玉県内の高校や専門学校で過労死防止対策等に関する特別授業をおこなっていますが、この中で、過労死や精神障害の発症が労災認定される件数の多い業種(運送業、小売業、医療・介護等)についてピックアップし、長時間労働などに注意しなければいけないと話すことがありました。すると、授業後に教員から、うちの学校からこれらの業種に就職する生徒が多い、生徒達が社会に出るのが怖くならないか心配だ、といったことを言われました

労働法の講義を担当している母校の早稲田大学では、毎回の講義後の学生のコメントで、例えば、三年も働いているのにアルバイトだからという理由で有給休暇はないと言われているというような相談が多々寄せされます。しかし、法律的には、アルバイトであっても条件を満たせば有給休暇は取得できます。そのため、このような質問に対しては、残念ながら法律違反の可能性があるようだと答えざるを得ません。

大人の一人として、このような労働環境が存在することを若者に伝えなければならないことを申し訳なく思います。それでも、労働法の長い歴史を考えれば、若者が安心して働ける環境が少しずつでも実現されてきていることも事実だろうと思います。学生たちが働くことに前向きになって社会に出ていけるよう、何を、どのように伝えるべきか、今年も試行錯誤したいと思います。 

弁護士 佐渡島 啓

(事務所ニュース・2023年新年号掲載)

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