「貧困理論入門  連帯による自由の平等」(志賀信夫・県立広島大学准教授著。堀之内出版)が発刊

 「貧困理論入門  連帯による自由の平等」(志賀信夫・県立広島大学准教授著。堀之内出版)が本年5月に発刊されました。本書は、「貧困をどのように理解するか」「貧困とは何か」を整理し、「貧困概念」の歴史的な拡大過程を追いながら、貧困対策の理論的核心を探ります。生活保護基準引下げ撤回訴訟の取組が全国で進められていますが、著者の志賀信夫県立広島大学准教授が書かれた、現代社会における貧困の捉え方に関する意見書が各地の裁判所で提出されています。

 第1章から第6章からなる本書の第5章には「普遍主義と脱商品化」の節があり、第6章の最終節は「無所有に対する抵抗」です。そこでは、社会的排除に対する具体的な政策アイデアとして、保育、教育、介護、住宅の「脱商品化(低額化、無償化、普遍化)」が提案され、これをベーシック・サービス(BS)と呼び、ベーシック・サービスは、「自由の平等」に貢献し、無所有及び物象化への対抗を可能とするとし、その有効性が強調されています。日弁連公正な税制を求める市民連絡会が提言するところと同じ方向性であると思います。

 そして、選別主義だけが貧困対策として効果を持つわけではなく、上記のような政策アイデアは、理想論として批判されるかもしれないが、「理想は机上の空論とは異なる」、「理想論であるという判断がなされるからといって、潜在的にもっている可能性を捨て去る理由にはならないし、闘いをやめる理由にもならない」と述べられています。

 「租税抵抗の財政学」の著者である佐藤滋さんが、2016年の公正な税制を求める市民連絡会の設立1周年記念集会の際、政治学者の丸山眞男さんの言葉を紹介して講演を締めくくられたことを思い出します。「『現実はそうはいかない』という考え方は、現実感として間違っている。『リアル(現実)』とは、『可能性』の束であり、重要なのは『方向性』の認識である。」。現実や既成事実に屈服せず、連帯していくことの大切さをあらためて考えます。

弁護士 猪 股  正

 

 

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