2022年4月10日(日)、反貧困ネットワーク主催の「反貧困全国集会2022」が開催されました。2007年にスタートして以来、15年目となります。集会のアーカイブ録画をご覧になれます。ミャンマーから避難し、難民申請を却下され、収容、仮放免、再収容を経験しているお二人の報告もあります。この国で、就労の自由も移動の自由も奪われ、医療にもかかれず、社会保障制度にも支えられず、自由も人権もない「無権利状態」の置かれている外国人がたくさんいるという現実に、私たちはどう向き合ったらいいのでしょうか。
当日、採択された集会宣言をご紹介します。
反貧困全国集会2022集会宣言「コロナ禍、3年目 生きさせろ」
コロナ禍が到来。2020年3月、反貧困ネットワークが呼びかけて、多くの団体と連携して「新型コロナ災害緊急アクション」の取組が始まりました。この2年以上で寄せられたSOSは2000件近く。そのうち83%がすでに住まいを失った人、半数近くがすでに電話が止まった人からのものです。今も連日「所持金ゼロ円」「何日も食べていない」といったSOSが続き、非正規雇用、女性や若者、在留資格を持たない外国人をはじめ、多くの人が生活に困窮し生存の危機に追い込まれる状態が続いています。
私たちは、日本社会で深刻化する貧困や格差の拡大が社会構造の問題だと訴え続けてきました。新自由主義の政策が進められ、食料、エネルギー、医療・介護、保育・教育といった人間の生存に必要不可欠なものまでもが市場原理に委ねられ、弱肉強食の競争原理の中で、強い者がより強く豊かになり、中流層が減少し低所得層が拡大し、社会の分断や対立を拡げる力が止まりません。小さな政府、規制緩和、大企業・富裕層の減税、正規雇用から不安定で低賃金な非正規雇用への置き換え、雇用保険・年金・生活保護など幅広い分野での給付削減・負担増による社会保障の縮減、社会保障サービスを支える公務員の人員削減・非正規化・業務の外注化。最後のセーフティ・ネットである生活保護が扶養照会や水際作戦で機能しない状況。働き方が壊され、社会保障に支えられないのに、「助けてと言えない社会」。自己責任が喧伝され、社会の責任を個人に押し付け、生活保護をバッシングし、「底が抜けた支えのない社会」「どうしようもなく孤独な社会」。こんな社会をコロナ禍という災害が襲い、元々あった危機が、増幅され、浮き彫りになりました。
そして、コロナ禍3年目。失業の長期化、所持金の枯渇、借金、滞納、医者に行けない、離婚など、様々な問題が複合化し、貧困から抜け出せず、自己肯定感を喪失し、孤立を深め、精神的にボロボロにされている人が増え続けています。ウクライナ危機で一層進む物価上昇が生活困窮者にさらなる追い打ちをかけ、自助・共助が強調され公的責任が後退したままの政策が続く中、当事者も支援者も疲弊し追い詰められています。
今日の集会では、女性・非正規雇用・外国人など、当事者や支援の現場からの声や連帯・参加・協働の取組が報告され、韓国から反新自由主義・反貧困連帯運動の報告がありました。地域の現場では、引き続きネットワークを拡げ、居住、相談、就労、医療、孤立防止などをつなげた中長期的な支援を連携して進めていくことが必要です。また、新自由主義や自己責任社会を転換し、住まいを「ベーシック・サービス」として実現することなど公的責任を拡充して貧困を生み出さない政策へと転換することが必要です。
反貧困ネットワークの呼びかけに応じた市民からのカンパにより「反貧困緊急ささえあい基金」がスタートし、これまでに、延べ約2900人に合計8000万円以上の給付支援を行い、いのちをつないできています。
危機は転機でもあります。今こそ、1人ひとりが地域において草の根の取組を進め、個別の問題の枠や民間と行政などの立場を越えて互いにつながり、分断・対立・競争の構造を、連帯・参加・協働の構造へと転換しましょう。「生きさせろ!」と声を上げ、自己責任の闇を打ち払いましょう。人間らしい生活と労働の保障を求め、人間の幸福追求や尊厳を互いに支え合う社会をつくるため、私たちは、これからも声を上げ、つながりを広げ、行動することを宣言します。
反貧困全国集会2022参加者一同
2022年4月10日
集会のアーカイブ録画はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=Xk62q7EQ9p4&t=2s