初接見の思い出(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

確か、埼玉総合法律事務所に入所してまだ一週間経っていなかったと思う。先輩弁護士に走り書きしたメモを渡され、依頼者の関係者が警察に逮捕されたからすぐに行ってきてくれと。幸手警察

場所を確認するために幸手警察のホームページを見てみると、幸手駅から徒歩50分。「徒歩」50分

当然幸手駅からはタクシーで幸手警察署へ。どんな事件だったか、どんな接見をしたのかは、全く記憶がない。が、ともかく無事に接見を終えて幸手警察を出た。タクシーは全く走っていない。電話して呼ぶか、でもまだ初任給ももらってないし、歩くか。地図あるし

歩き始めた頃はまだ夕日があったが、しだいに暮れてくる。周りは田畑ばかり。明かりがもれてくる戸建ても、薄暗い街灯もポツリポツリとしかない。タクシーが通ったら拾おう。しかし、全く通らない。人も歩いていない

明るい建物が見えてきた。あれが幸手駅だな。元気を取り戻して歩いて行ったが…違う…何の建物かもよく分からない

周辺が田畑ばかりで目印のない地図は役に多立たず、もともと迷い気味だったが、正体不明の建物を目指したことで決定的に迷子に。あとは放浪。あっちに歩いてみては、こっちに行ってみる

勘がアテにならないと思い知って一時間半、奇跡的に通りかかったタクシーに乗り込み、ようやく幸手駅に

いろんな失敗を積み重ねての10年、これからもめげずにやっていきたい。

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