新安保法(=戦争法)違憲国家賠償請求訴訟に注目してください(弁護士 伊須 慎一郎)

弁護士 伊須 慎一郎

2016年6月20日、埼玉県内で暮らす市民の皆さんが中心となって、さいたま地方裁判所に、今年3月29日に施行された新安保法の制定行為等によって、平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権を侵害され、精神的苦痛をこうむったとして国家賠償請求訴訟を提起しました。
原告は318名、訴訟代理人は104名(うち埼玉弁護士会会員は102名)にのぼります。

本件訴訟は、裁判手続の中で、①新安保法の集団的自衛権行使や後方支援活動に関わる規定等が一見明白に憲法9条に違反すること、②航空自衛隊イラク派遣事件で、違憲判断を下した名古屋高裁判決が示した平和的生存権の権利内容をさらに発展させること、③集団的自衛権の行使等を容認した閣議決定・新安保法案の提出・国会での強行採決という一連の行為によって、政府と国会が憲法改正手続の回避によって、憲法9条の規範を踏み越えたことは、国民投票権を含めて私たちが日本社会の平和のあり方を決める権利を侵害したという、これまで裁判で争われたことがない新たな論点等を含みます。

しかし、本件訴訟の意義はそれだけではありません。新安保法に基づき戦争をする国づくりが着々と進むと、私たちの普通の暮らしが徹底的に壊されてしまいます。
①時の政権への反対意見が言えなくなり、デモの規制や集会のための公共施設が借りられず、②教育に政治が介入し、子どもたちに国(一握りの権力者)のために血を流すことを教え込み、③抑止力を理由に中国との軍拡競争に巻き込まれ、5兆円を超えた防衛予算はどんどん増え、④法人税や富裕税に手を付けないまま、消費税はどんどん上がり、⑤防衛装備移転3原則により私たちの暮らしを守る税金が防衛産業に流れる一方で、社会保障や福祉は切り下げられ、⑥奨学金の返済に苦しむ若い労働者が危険な任務を課せられる自衛官となる等、私たちの命と生活が粗末にされる社会になってしまいます。
本件訴訟は、外国籍の方も含めた市民の皆さんと、日本がこのような社会に巻き戻されることを阻止するためのたたかいでもあります。注目してください。

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