朝ドラ「虎に翼」の主人公・寅子が発する「はて?」が人気だ(少なくとも私の周りでは)。結婚したら女性は「無能力者」とされる戦前民法の規定に、思わず「はて?」(このときは「はあ?」くらいのさらに強い調子だった)に始まり、度々発せられた「はて?」に皆さん、共感されたと思う。
妊娠・出産が重なり疲れ果てて、弁護士を一度辞めて「はて?」を発することがなくなっていた寅子が息を吹き返したのは、小林薫演じる「穂高」教授の発言だった。穂高教授は寅子に、戦後の民法改正の大事業はあまりに大変だからと、楽な家庭教師の道を準備してくれた。この「女性だから」「特別扱い」に寅子は「先生は何もわかってらっしゃらない」と「はて?」と突きつけたのだ。
女性の人権を大切に考えていた穂高教授でさえ、その感性は時代の制約を受け、女性を「男性とは別」に扱ってしまっていた。
「はて?」と異論を述べるのは難しい。私には「はて?」を感じる感性が足りない。
しかし、せめて、「はて?」を発する人を煩がらず、「はて?」を妨害せず、そして、たまには「はて?」の後押しをする役割を果たしたいと思うのである。
ところで、穂高教授はこの場面で、こうも言っている。「今はまだ女性たちが生きやすい社会ではない。それこそ、憲法と民法が世になじんだ時に初めて叶うのかもしれない。」。日本国憲法や戦後改正民法は、日本社会になじんでいるのだろうか。ここでもまだ「はて?」が必要である。
弁護士 髙木 太郎
(事務所ニュース・2024年夏号掲載)