【コラム】自由・平等・連帯の国、スウェーデン(弁護士 猪股正)

今年10月3日に開催される日弁連の人権擁護大会の準備のため、5月に、スウェーデン調査に行ってきました。スウェーデンは高福祉・高負担で知られる国ですが、国連世界幸福度レポート2024では、幸福度は世界4位(日本51位)、人生の選択の自由への満足度も4位(日本72位)であり、日本とは対照的です。
ちょうどEU選挙の期日前投票期間中であり、公園に「選挙小屋」が作られていました。「選挙小屋」は、各政党が市民に身近な場所で政策を訴え市民と対話する仕組です。スウェーデンの高い税負担についてインタビューしてみると、右派であるスウェーデン民主党のスタッフは、「税金の無駄使いをなくすことは重要だが、税率を下げることより、今の社会保障の水準を維持することが重要だ。」と話してくれました。
また、左派である社会民主党の若者たちは、「自分の財布にお金があってもなくても、チャンスがあり自分の人生を生きることができる。」というスウェーデンでよく引用される言葉を紹介し、互いに税を負担することによって福祉が充実し様々なサポートを受けながら自分らしい人生を送ることが可能となっていることの大切さを指摘していました。
自治体など12か所を訪問しましたが、スウェーデンでは、民主主義を育て、すべての人の自己実現を支える努力が社会全体で行われていると実感しました。

スウェーデン在住の訓覇法子先生から、スウェーデンは「個人が自立すればするほど連帯する」ということを実証してきた国だと学びました。民主主義社会において、すべての人に対等の価値があるということを前提に、すべての人の自由を本当の意味で保障することが重要であり、そのために、すべての人の経済的自立を支える努力をし、自立して自由を獲得した人々が、社会の共同建設に参加し、参加を通じて人々の連帯が促進されるという、自由・平等・連帯のあり方について、あらためて考える機会となりました。
私たちの社会が、誰もが、自分らしい人生を生きることができる自由・平等・連帯の社会となることを願い、他国に学び、地域での協働の実践を大切にしていきたいと思います。

弁護士 猪股 正
(事務所ニュース・2024年夏号掲載)

image_printこのページを印刷
シェアをお願いいたします。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次