【コラム】幸福を願う(弁護士猪股正)

 2023年、埼玉総合法律事務所は開所50周年を迎える。気付けば、入所後、その歴史の過半を超える月日が経った。私のような者を受け容れてきてくれたこの事務所の懐の広さに感謝するばかりだ。

 コロナ禍が急来したこの3年間も、事務所の大会議室を利用させてもらい、臨時電話回線を引き、全国一斉電話相談会の埼玉の拠点として、計17回、合計1万5000件以上の相談に全国連携で対応した。法律家のほか、労働、医療、こころ、生活支援の専門家など延べ約500人が参加し、コロナ禍を乗り越えて、地域での協働の取組を続けることができた。

 毎回、12時間、電話に向かい続けた。低年金や無年金で、生活が立ちゆかないという高齢の人からの相談が多い。「仕事もなく、生きる目標もない。明日死んでもいい。」「餓死・孤独死が自分に近付いていると思う。」「これで最後と思い電話しました。」。ニュースが映し出す全国旅行支援や年末年始の賑わいとは隔絶した現実。高度経済成長~バブルの崩壊~リーマンショックなどの社会変動を生き抜き、高齢となった今、孤立し生きる意味を感じられない社会。自己責任の名のもとに競争を強いられ、生まれた家の経済力が人生を大きく左右し、失敗すればやり直しがきかない社会。人間として生きる意味や幸福を求めることが一部の幸運な者の手にしか渡らない社会。こんな理不尽な社会のままなら、外から攻撃されるより先に、内部から崩れていく。

 50年を振り返り、自分、事務所、地域、この国の未来を考え、何ができるかをあきらめずに考え続ける1年を歩みたい。

弁護士 猪股 正

(事務所ニュース・2023年新年号掲載)

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