【コラム】生きているうちに解決を(弁護士竹内和正)

建設アスベスト訴訟は、昨年5月、最高裁によって原告勝訴の判決が言い渡されました。国は最高裁での敗訴を受け、被害者に賠償するための給付金法を成立させた上で、支払いを開始しています。しかし、国からの給付は被害額の半分に過ぎず、アスベストが含まれる製品を作って利益を得ていた建材メーカーは、いまだ全国各地の裁判所で争い続けています。

この裁判は提訴からすでに14年が経過しています。14年はあまりに長い年月です。新人弁護士だった青年は中年になり、原告の皆さんは14つ年齢を重ねるか、もしくはお亡くなりになりました。この間、提訴時にご存命だった300人近くの原告の方が「解決」をみることができないまま亡くなってしまっています。

ただ、このような被災者数は単なる数字に過ぎず、それだけで被害の実態を把握することはできません。遺族として原告になった方それぞれの話を聞くたびに、名もない誰かが亡くなったのではなく、目の前にいる原告の方の愛する夫や妻、尊敬する親や祖父母、そして、大切な子どもがそれぞれに亡くなったのだと思い知らされます。原告の皆さんは、愛する家族が苦しいと繰り返しながら亡くなっていく壮絶な最期をなすすべなく看取り、この裁判に参加しています。使い古された表現ですが「奪われた命にはそれぞれに名前があり、全うすべき人生があった」はずです。なぜ被害救済がすすまないのか、なぜ、この人たちがいまだに苦しみ続けなければならないのか。

原告の皆さんから、「私ももういつまで生きられるかわからない。なんとか解決まで生きていられたらいいんだけど・・・。」という話をよく聞くようになっています。「もう少し頑張りましょう。」などと軽はずみに言うことはもうできません。

建設アスベスト訴訟は、「生きているうちに解決を」というスローガンのもと闘われてきました。もはや祈りに近い気持ちで「生きているうちに解決を」と考えています。

弁護士 竹内 和正

(事務所ニュース・2022年夏号掲載)

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