「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」弁護士谷川生子

もしものときに本人が希望する医療やケアについて、元気なうちから考え、家族、医療・ケアチームと話し合いを重ね、共有する取組のことです。

2018年、厚労省は、この取組の普及のため、愛称を募集し、「人生会議」という名称に決まりましたが、広報の失敗もあり、ネガティブな印象が先行しているかもしれません。
何で自分が死ぬときのことを他人と話し合うの?結局発言力のある人の意見に左右されるんじゃないの?そもそも国が普及を目指すってうさんくさい・・・
そう感じる人は少なくないようです。

名称や政府の思惑はさておき、仮に残された時間が少なくなったときにどのように過ごしたいかを予め考えておくこと、考えるだけではなく信頼する人と話し合っておくこと自体は大事なことだと思います。

人は誰でも自由に、自分の決めたとおりに生きる権利があり、「自己決定権」は、幸福追求権の一つとして憲法上保障されています。
他方、「本人の意思」は一歩間違うとALS嘱託殺人のような事件につながる危険性もあります。人生の最終局面でだけ、その人の意思を尊重するということは不可能ですし、あまり意味のあることには思えません。

少しでもその人の真意を尊重するためには、元気なうちから、医療や福祉制度について十分な情報を与えられた状態で、信頼する人と気兼ねなく、繰り返し話し合えるようなシチュエーションが必要です。もっといえば、必要なケアを受けられるだけの経済的な余裕や、仕事に追われずゆっくり考え、話すことのできる時間等も必要でしょう。

そんな社会いつ実現するの、と下を向いてしまいそうですが、まずは身近な人間同士、よく知り合うことが重要なようです。確かに、家族や年中行き来している間柄でも、案外知らないことは多いものです。日頃、何が好きとか、どんなことを大事にしているかを話すことから始めるのが良いかもしれません。
考えると気の長い話ですが、そうか、だから人生なのか、と「人生会議」の名前がついたのも少しわかるような気がしました。

弁護士 谷川 生子

 

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