政教分離と大嘗祭(弁護士 伊藤 明生)

憲法二〇条一項前段は信教の自由を保障し,後段で同三項で「国及びその機関は,宗教教育その他いかなる宗教活動をしてはならない」と定めています。また,憲法八九条は公金は宗教上の組織のために使用してはならない旨定めています。これらの規定は政教分離原則といわれているものです。政教分離原則とは国家の非宗教性,宗教的中立性を実現することにより,信教の自由を制度的に保障しようとする原則です。

さて,大嘗祭です。大嘗祭は,テレビでも放映されていましたからご覧になった方もおられるでしょう。この大嘗祭は国が行っているものではありませんが,27億円もの国の予算が使われました。大嘗祭は,戦前の日本で神権的天皇象を国民に知らしめるための儀式でした。戦前と同じ次第で今回の大嘗祭も行われました。戦後の日本が否定した神権的・絶対的天皇制儀式を,そのまま再現することはいかがなものでしょうか。30年前の「平成の代替わり」の時,大嘗祭への公金支出は政教分離原則に反するとして,訴訟が提起されました。その訴訟で大阪高裁は,1995年3月9日,賠償請求は斥けたもものの「少なくとも国家神道に対する助長,促進になるような行為として,政教分離原則に違反するのではないか疑義は一概に否定できない」という判決を出したのです。

弁護士 伊藤明生

 

(事務所ニュース・2020年新年号掲載)

 

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