埼玉朝鮮初中級学校を訪問して

北朝鮮が何か行動を起こすと、多くのテレビ番組で連日北朝鮮に関する報道がなされますが、
こういった過熱する報道の裏で、辛い目にあっている人がいます。
在日朝鮮人の人々です。

さいたま市大宮区には朝鮮初中級学校があります。日本でいう小学校中学校にあたる学校です。
連日、北朝鮮に関する報道がされていた頃、ここに通う学生は同年代の日本の学校に通う小学生から「テポドン」とからかわれたり、「朝鮮人死ね」と朝鮮語で言われたりしたそうです。

在日朝鮮人の人々の多くは日本で生まれ育った人たちで、朝鮮に行ったことがない人も少なくありません。それなのに、北朝鮮に対する社会の目が厳しくなればなるほど、彼らに対する誹謗中傷も増えてしまいます。

先日私は、この大宮区にある朝鮮学校に同期の弁護士数名と訪問し、学校見学をさせていただきました。

朝鮮学校は、学校教育法1条の「学校」として認められていないため、国からの教育助成が受けらません。
学校や学校に通う生徒がいる家庭に対して、補助金を出す自治体もありますが、近年、補助金を支給することを止めたり、制限したりした自治体も少なくありません。

授業料等で賄い切れないところは、自分たちで費用を出し合うことで学校の設備を維持しています。
ただ、それには限界があります。
この朝鮮学校には給食がありません。保健室もありません。

在日朝鮮人の人々にとって、朝鮮学校というのは、自分のルーツが朝鮮にあること、自分たちがなぜ日本で生まれ育っているのか、そういったアイデンティティーを培う場です。それと同時に在日朝鮮人の人々の交流の場ともなっています。
そのため、費用がかかったとしても日本の学校ではなく朝鮮学校に子供を行かせる人がいるのです。
そして、そういう場所であるからこそ、保護者や教師が一体となって、何とか学校を維持していようと頑張っているのです。

学校を盛り上げようとイベントを企画してみたり、教育水準を上げようとICTを活用した教育を導入したり。
学校で行うイベントには日本人の人々も協力してくれるそうです。
生徒や保護者で巨大な海苔巻きを作るというイベントをした際には、日本の業者が特注の巨大な海苔を作ってくれたそうです。このとき、父兄は朝鮮学校のイベントで使用することを伝えた上で発注したそうです。
また、学校のイベントとしてマグロの解体ショーをおこなったときにも日本の業者が協力してくれたそうです。

国家レベルでは、敵対するような報道が続いていますが、個々の人々のつながりではそのようなことはありません。
少なくとも私の知っている在日朝鮮人の人々は、日本人に在日朝鮮人のことをもっと知ってもらいたいと考えています。
もっとたくさんの日本人に在日朝鮮人の人々と直接触れ合って、彼らを知ってほしいと思います。

弁護士 鈴木 満

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