見えない川をたどる

ここ埼玉総合法律事務所から、遊歩道を南へ5分ほど歩くと、さいたま市立岸町小学校がある。母校である。地域の地理や歴史を学ぶ授業で、遊歩道と校庭の真下を川が流れていることを教えてもらった。その後、学校の真下を流れる見えない川の不思議な姿は記憶の奥底に沈殿していた。

いつの間にか時が経った。「ハァッロー ハロー お元気?今夜 なにしてるの?TVなんか 見てないで どこかへ 一緒に行こう」と井上陽水がテーマソングを歌うNHKのブラタモリのファンになった。何気ない光景の向こうに自然の営みや歴史が隠れている。暗渠(あんきょ)や段差や縁(へり)から見えないものが見えてくる。暗渠(あんきょ)とは、地下や蓋の下の暗いところを流れている見えない水路のことである。地図とコンパスを持ち、小さな谷の分岐を探す沢登りのわくわく感ともどこか似ている。

JR埼京線の武蔵浦和駅の東側を笹目川が流れている。以前に比べると、随分と浄化され、今は、アオサギなどを見かけるようになった。川の流れは南下し戸田の戸田漕艇場付近で荒川に合流する。逆に、北上して遡ると、国道17号と交わる地点で、川の流れが姿を消す。
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川の上流方向には遊歩道がある。長年、ただ通り過ぎるだけの場所だったが、ある日、暗渠だと気付いた。そして、小学生のころの遠い記憶が蘇った。見えない川の痕跡を探す。この遊歩道は白幡緑道と名付けられ、北へたどると、「中央排水路」と刻まれた古いコンクリートがひっそりと草に埋もれていた。
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遊歩道は、右手の白幡沼を過ぎ、岸町小学校に突き当たる。

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校門の左右に急な坂があり、小学校がV字の谷の底にあり、そこに川があることを物語っている。小学校の校庭を抜けると、遊歩道は岸町緑道と名前を変える。
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岸町緑道は、浦和駅周辺の耕地整理に伴って完成した岸町西大排水路が暗渠化されたものらしい。岸町緑道が終わると、車道の右に蓋暗渠が続く。左には、さいたま拘置支所の崖があり、古そうな石垣が残っている。

以前は浦和監獄(刑務所)があり(地図は明治15年頃。「歴史的農業環境閲覧システム」より)、秩父事件で蜂起した農民も収監されていたらしい。
歴史的農業環境閲覧システム・浦和
そして、埼玉総合法律事務所前の坂下通りに合流する。坂下通りをさらに北へたどると、常盤公園(将軍家の浦和御殿跡)や井戸があり、川が続いているのかもしれない。

魅惑されたのは私だけではない。ひと月前、北浦和駅東口、浦和高校の西を流れていたはずの天王川が姿を消していたことに気付いた。そして、この連休、息子と2人、時を忘れて天王川を探し暗渠を巡った。(報告は、またの機会にします。)

弁護士 猪 股  正

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