NHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」から「ワンダーウォール」

映画「新聞記者」で若手エリート官僚役を演じた松坂桃李さん主演のNHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」。どちらも、崩壊しつつあるこの国の組織、腐敗する権力、組織や権力に翻弄される人間がテーマとなっている。

「今ここにある危機とぼくの好感度について」というタイトルも意味深であり、社会が向き合うべき大事なテーマを、重すぎないタッチで描いて共感を生む。これを書ける脚本家は、どんな人なのかと思い、検索すると、京大の吉田寮の取壊し問題に光を当てたドラマ「ワンダーウォール」の脚本を書かれている。幸い、まだNHKのオンデマンド(https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018089943SA000/
にあったので、引き込まれるようにして観た。

「こんなぼろくて汚い寮をこれだけ歴代の寮生たちが残そうと努力し続けてきたということは、案外ここには人間の幸福にとってすごく必要な何かがあるのではないか」というセリフ。

脚本家の渡辺あやさん。取材で、こんな風に語られています。「いまの日本は、経済効率性だけを重視して、古いものは大してお金を生まないからと、潰していきますが、翻ってみると、建物のみならず、私たちにも、そういう呪いをかけているのではないかと感じるんです。誰もがいずれ年を取り、経済効率的に価値のない存在になったら、“意味のないもの”になるのだという呪いをずっとかけ続けていることのような気がして、それがなんとなく今の私たちを息苦しくさせている原因じゃないかと思うんですよね。
「ワンダーウォール」を作り、歴史ある大学寮のように古いものは大事だと登場人物を通して言わせてみたものの、それは一体何だろうということが自分でもずっとわからなくて。ずっと考え続けていたのですが、やっぱり古いものを大事にするとかその場所にある歴史を大事にすることは、そこに流れてきた時間や生きてきた人たちを大事に思うことで、そうすることによって自分も救われていくことにつながるような気がするんです。だからこそ、古いものを簡単に壊してはいけないと思うのかなと、最近考えています。」https://telling.asahi.com/article/13281611

危機は深いと思いますが、渡辺さんのような素敵な人が、あちこちにいると思うと、未来に希望を感じます。

弁護士 猪 股  正

【参照記事】
telling 映画『ワンダーウォール』脚本家・渡辺あやさん「何が本当に正しいのか、一人で考えるには重すぎる課題がたくさんある」
映画board 失敗したっていいんだと伝えたい『ワンダーウォール 劇場版』脚本家・渡辺あやインタビュー
2020年4月3日 朝日新聞記事 「壁」と哲学、学生寮舞台に 「ワンダーウォール劇場版」脚本・渡辺あや
2020年7月15日 朝日新聞記事 夫の最期の顔は絶望に満ちていた 赤木さん妻の陳述全文
文藝春秋ブックス「私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?」赤木雅子 相澤冬樹

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