見た目も中身も(弁護士 鈴木 満)

先日、厚生労働省が作る労災の認定基準が見直されるという報道が出ました。
働き方の多様化に対応するという趣旨もあるようですが、基準だけ変わっても、その基準に当てはまるかどうかの認定を適切なものとしなければ、不十分のように思います。
今の認定基準において、労災にあたるかどうか検討する際に、特に重視されるのは、労働時間の長さです。

しかし、近年、労災審査の実務では、自宅に持ち帰って仕事をしていた時間について、業務用パソコンの使用記録が残っていても、それを労働時間と認定するか否かの判断は厳しくなっているのではないか、という話があります。
パソコンを持ち帰れば自宅で仕事ができるようになり、自宅等、会社以外のところで働くテレワークの促進されているのにもかかわらず、このような傾向があるのであれば、隠れた労災の増加につながります。
仮に、新しい認定基準で過労死ラインと呼ばれる残業時間数の基準が下げられたとしても、労働時間に該当するかどうかの認定が必要以上に厳しければ意味がありません。
ジタハラ」という言葉がありますが、残業時間数の上限規制が設けられた結果、必ずしも労働時間数が減ったわけではなく、むしろ自宅へ仕事を持ち帰ってサービス残業をしなければならなくなったという話もあります。

国には、認定基準という「見た目」だけ見直すのではなく、労災審査の実態という「中身」についても見直しをしてほしいです。

弁護士 鈴木 満

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