発刊「東京電力の変節-最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃」(後藤秀典著・旬報社)

 「東京電力の変節-最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃」(後藤秀典著・旬報社)が発刊されました。

 原発事故から12年以上が経過しましたが、避難を余儀なくされて、仕事、学び、家族や友人とのつながり、生きがいなどを奪われ、また、避難先でのいじめや孤立などにより、人生を大きく変えられ、深い傷を追って、今も、苦しみ続けている人がたくさんいます。

 ところが、国は、事故の責任を認めずに裁判で争い、東京電力は、裁判で被災者の人格を傷付けるような主張までするようになり、2022年6月には、最高裁第二小法廷(当時、菅野博之裁判長)は、4つの高裁判決のうち国の責任を認めていた3つの判決を覆し、国が規制権限を行使しても事故は回避できなかったという理由で、あっさりと国の責任を否定する判断をしました(菅野、草野耕一、岡村和美裁判官の3人が判決を支持。三浦守裁判官は国に責任があるとの少数意見)。その後、国は、原発回帰へと方針を大転換し、今、第一原発の廃炉の見通しも立たない中で、漁業関係者や国民、諸外国の反対にもかかわらず、汚染された「処理水」の海洋放出を強行するに至っています。そして、こうした国、東電、最高裁判所などの対応が、傷に塩を塗り込むように、被災者の苦しみや痛みをさらに深いものとしています。

 本書は、最高裁判所、巨大法律事務所、東京電力、政府の人脈をたどり、相互に癒着し、最高裁の公正中立「らしさ」さえ損なわれていることなど、こうした動きの背景を掘り下げ、過ちを繰り返し被災者を苦しめ続ける政治や司法のあり方に警鐘を鳴らすものです。このままでは、現場を知らず、人々の苦悩を知らない一部の「司法エリート」や政治によって、司法のあり方や国のあり方が大きく歪められていくことが強く懸念されます。正しい道を進むためにどうしたらいいのか、私たち1人ひとりに問いかけられていると思います。

【関連情報】
NHK・ETV特集「誰のための司法か〜團藤重光 最高裁・事件ノート〜」

文責:弁護士 猪 股  正

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