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埼玉弁護士会「憲法と人権を考える市民のつどい」(弁護士 谷川 生子)

埼玉弁護士会「憲法と人権を考える市民のつどい」(弁護士 谷川 生子)

埼玉総合法律事務所 谷川生子

<掲載記事データはこちらをご参照ください>
2015年5月21日(木),埼玉弁護士会主催「ほんとうにいいの?集団的自衛権~あなたが戦地に派遣される時~」と題する市民のつどいが開催されました。
埼玉弁護士会では,2013年12月以降,5回にわたり集団的自衛権行使反対を唱える市民のつどいを開催しています。

1 これまでの経過

2013年12月10日の集会は「なぜ,今『国防軍』なのか」と題し,元外務省国際情報局長の孫崎亨氏,ジャーナリストの半田滋氏をゲストに迎えました。

2014年4月9日には,12月の集会の第2弾として「なぜ,今『集団的自衛権』なのか」と題し,ゲストに半田滋氏と元内閣官房副長官補の柳澤協二氏を迎えて開催しました。
この集会の参加者はおよそ600人で,国民の関心の高さがうかがわれました。

同年7月31日の集会は,作家のなかにし礼氏,学習院大学教授の青井未帆氏を迎え,1,000人を超える参加がありました。
なかにし氏には「若者よ 戦場へ行くな」という自作の詩を朗読して頂きました。

同年12月4日は,映画監督の山田洋次氏,中央大学教授の植野妙実子氏を迎え,2500人収容のホールで開催しました。
若い世代の参加者がいつもより多く見受けられました。

毎回,参加を募るために,市民団体等のつどいの連携を図る努力をしています。
2014年4月の市民のつどいの準備段階で,埼玉弁護士会と市民団体との懇談の場を設け,協力を呼びかけたことが功を奏し,当日はいつになく多くの市民の参加がありました。
以降,折に触れ,市民団体との意見交換の場を設けるよう努めています。

2 ほんとうにいいの?集団的自衛権~あなたが戦地に派遣される時~

(1) 今回は,大勢の参加を目指すよりも,若い世代の人々に呼びかけることに主眼を置いて,市民のつどいを開催しました。

集会の前半はイラク支援ボランティアの高遠菜穂子氏による講演,後半は同氏と,日本国際ボランティアセンター事務局長の長谷部貴俊氏,前述の柳澤協二氏によるパネルディスカッションという二部構成でした。
高遠菜穂子氏はイラクで,長谷部貴俊氏は主にアフガニスタンでボランティア活動を続けておられます。

前半:高遠氏による講演

高遠菜穂子氏には,イラクの現状,対テロ戦争とは何か,等についてご報告頂きました。
イラク政府は対テロ作戦として武力行使しかないと考え,米国から武器の提供を受け,ISと同様の行為を繰り広げている,しかし,ISの勢力拡大の要因を検証しないまま闇雲に武力を訴えたところで成功はしない,むしろそのイラク政府の対応が憎しみの連鎖を生み,さらにISの勢力を大きくしている,という構造について解説して頂きました。

また,ISの残虐行為はメディアに取り上げられてもイラク政府のしていることは取り上げられず,国際社会が事態を放置したことにより,さらにISが勢力を増していったことについて,映像を交えながらお話し頂きました。
その上で,対テロ作戦として武力行使一辺倒の国際社会を見て、日本だけ平和ではまずい,集団的自衛権を行使して国際貢献しよう,というやり方はおかしいと指摘されました。

そして,情報鎖国の状態を克服し,「戦争をしない国」にとどまらず「戦争を止める国」づくりが必要であり,しかもそのための具体策を講じなければならないとの訴えで講演が終わりました。

後半:パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションは,長谷部貴俊氏と柳澤協二氏にそれぞれ短時間ご講演頂いた上で,始まりました。

長谷部氏からは,アフガニスタンの現状が,どこが戦争状態なのか,どこに敵がいるのかを見分けることも不可能なメチャクチャな状態であること,武器を保たず軍と関わらないことが身の安全を守る方法であること,日本が紛争地に軍隊を出せば間違ったメッセージが中東諸国に伝わることなどをお話し頂きました。

柳沢氏は,安保法制,新ガイドラインの中身の特徴は,日米が政策的に一体化していくこと,自衛隊が軍隊になること,と指摘した上で,集団的自衛権を使わず他国の余計な戦争に関わらなかったことが70年間の平和の理由であり,今その抑制的な専守防衛の防衛政策が変えられようとしていることについて,もっと議論が必要であるとお話しされました。

パネルディスカッションでは,集団的自衛権の行使容認がイラクやアフガニスタンでボランティア活動を続ける日本人に与える影響,今のメディアのあり方,また情報を受け取る国民側の問題点,等について意見が交わされました。
日本の持つ平和のイメージは,まだ国際社会で失われておらず,積極的に和解の仲介役としての役割を果たすべきであり,武力行使の他になすべきことはまだまだ沢山ある,というのがパネリスト共通の意見でした。

(2) 本集会への参加は480名,圧倒的に年配の方が多かったとはいえ,若い世代の参加も見られました。
情報鎖国の状態を嘆くばかりでなく,英語を習得して自ら積極的に情報を集めること,このようなときだからこそ海外に出て客観的に自国を見つめることの必要性を訴える高遠氏の言葉は,参加者の心に響いたと思います。
どこか遠い世界の事のように感じる戦争ですが,日本人が見知らぬ外人の人々から憎まれ,暴力の標的となる日が近づいている,と誰もが感じたのではないでしょうか。

今後も市民集会に限らず,様々な形で市民の方に訴えかける活動を続けたいと考えております。

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