投資詐欺にご注意を!(弁護士 竹内 和正)

投資被害の相談が増えています。
LINEやインスタグラム等のSNSを通じて勧誘され、虚偽の投資実績等をみせられた上で、
このタイミングを逃す手はないですと焦らされてしまい、指定口座への送金を求められてしまうというものです。
そして、一度送金してしまうと、損失を取り返すため、もしくはより多くの利益を得るためにと繰り返し送金を求められ、最終的には勧誘者と連絡が取れなくなってしまいます。

近年の投資被害の問題点は、犯人と被害者の方がSNSでしかつながっていないため、犯人の住所、電話番号はもちろん、本名すらわからないことが多いという点にあります。

現状、弁護士を通じても被害回復が困難な案件が多いため、被害に遭わないために、SNSでの勧誘を受けて、そのまま投資を行わないことが何よりも重要です。
SNS上でしかつながりのない、本名も、住所も、電話番号もわからない個人やグループに、大金を預けることは危険です。
また、勧誘者名と口座名が違う指定口座に送金することも危険です。

文字で読めば当たり前のように思えますが、悪いタイミングが重なれば、誰でも詐欺被害に遭ってしまう可能性はあります。
皆さんもぜひご注意ください。

弁護士 竹内 和正




【コラム】木の棒を育てる(弁護士竹内和正)

家のベランダに中型のプランターを2台置き、もう何年も花や野菜、ハーブなどを育てています。突然生えてきたキノコにおびえたり、はっぱを食い荒らす虫と(直接さわれないので棒で)対決したりしながらも、プランターで四季を楽しんでいます。去年は、プランターの端に勝手に生えてきた雑草に、3か月程度、毎日水をあげ続け、こんもりと大きく育てることにも成功しました。

栽培欲は留まることを知らず、観葉植物も育ててみたいと考えるようになっていたのですが、室内の観葉植物に虫が発生してしまったらと考えると、怖くて手を出すことができませんでした。そうしていたところ、物欲しそうに観葉植物を眺める僕の姿をみかねた家族が、昨年の誕生日にお猪口に植えられた小さなパキラを贈ってくれました。僕は、とても嬉しくて、(家だと虫がついたら困るので)事務所で育てていたのですが、パキラは日を追うごとにどんどん元気がなくなり、葉が落ちていってしまいました。僕は、穴がなく水が抜けないお猪口の構造に問題があると考え、パキラを鉢に植え替えました。そして、その結果、現在は、おしゃれな白い漆器の鉢に、「パキラ」と書かれた札と、木の棒だけがささっている状態になっています。

そして、それから半年、僕は木の棒に水をあげ続けています。僕としてはパキラを育てているのですが、事務所の皆さんからすると、木の棒に水をかけ続けているように見えていると思います。さすがに気味が悪いのか、どうして僕が木の棒に水をかけ続けているのか聞いてくる人はいません。

枯れるも何も、現状、ただの棒なので、いつあきらめてよいかもわかりません。このままでは、新葉が出てこない限り、僕は黙々と、これからずっと、木の棒に水をあげ続けなければならないことになります。 なんとか今年、新葉が出てくれることを切に願います。

弁護士 竹内 和正

(事務所ニュース・2023年新年号掲載)

こちらの話には続きがあります。続編はこちらです。

https://saitamasogo.jp/archives/90278



【コラム】生きているうちに解決を(弁護士竹内和正)

建設アスベスト訴訟は、昨年5月、最高裁によって原告勝訴の判決が言い渡されました。国は最高裁での敗訴を受け、被害者に賠償するための給付金法を成立させた上で、支払いを開始しています。しかし、国からの給付は被害額の半分に過ぎず、アスベストが含まれる製品を作って利益を得ていた建材メーカーは、いまだ全国各地の裁判所で争い続けています。

この裁判は提訴からすでに14年が経過しています。14年はあまりに長い年月です。新人弁護士だった青年は中年になり、原告の皆さんは14つ年齢を重ねるか、もしくはお亡くなりになりました。この間、提訴時にご存命だった300人近くの原告の方が「解決」をみることができないまま亡くなってしまっています。

ただ、このような被災者数は単なる数字に過ぎず、それだけで被害の実態を把握することはできません。遺族として原告になった方それぞれの話を聞くたびに、名もない誰かが亡くなったのではなく、目の前にいる原告の方の愛する夫や妻、尊敬する親や祖父母、そして、大切な子どもがそれぞれに亡くなったのだと思い知らされます。原告の皆さんは、愛する家族が苦しいと繰り返しながら亡くなっていく壮絶な最期をなすすべなく看取り、この裁判に参加しています。使い古された表現ですが「奪われた命にはそれぞれに名前があり、全うすべき人生があった」はずです。なぜ被害救済がすすまないのか、なぜ、この人たちがいまだに苦しみ続けなければならないのか。

原告の皆さんから、「私ももういつまで生きられるかわからない。なんとか解決まで生きていられたらいいんだけど・・・。」という話をよく聞くようになっています。「もう少し頑張りましょう。」などと軽はずみに言うことはもうできません。

建設アスベスト訴訟は、「生きているうちに解決を」というスローガンのもと闘われてきました。もはや祈りに近い気持ちで「生きているうちに解決を」と考えています。

弁護士 竹内 和正

(事務所ニュース・2022年夏号掲載)




【コラム】 研修に行きたい(弁護士竹内 和正)

次々に変化する法律や新しい裁判例に対応するため、また研究すべき問題について情報を共有するために、弁護士業界では多くの研修会が開かれます。僕も弁護士になってから、たくさんの場所に研修に行きました。北は北海道、南は沖縄まで日本中を飛び回り、ドイツに行ったこともありました。弁護士という仕事は大変なことが多いけど、頑張って続けていけばこのペースなら日本全国をまわることができるかもしれないと夢が広がりました。

弁護士になりたてのころは、研修後の食事が楽しみでした。それからだんだんと研修を自主的に午前中で切り上げ、午後からは単独でフィールドワークに励むようになりました。名所、名物を楽しみ、時にはスポーツ観戦まで、まさに人生の研修をうけていたといっても過言ではない気がします。そして、最終的には研修に参加する弁護士と一緒に(時には前日から)現地入りし、研修組が研修中はフィールドワークに励み、研修後に2次会から合流するかたちに落ち着きました。広島まで行って野球観戦をしていたときは我ながらどうかと思いましたが、赤いタオルを肩にかけた僕の合流を許した研修組の皆さんもどうかと思います。先輩の弁護士と痛飲した翌日に「このままでは『酒さえ飲まなければいい人なのに。』とお互い言われてしまうから気を付けよう。」との金言を頂いたのも研修先の京都でした(それから10年近く経って、その先輩弁護士が実際にそのように言われていることも含め感慨深い出来事です。)。よい仕事をする条件として「遊ぶように働くこと」がよくあげられますが、研修中の僕はまさに遊ぶように働くことができていました。

しかし、コロナ禍、そしてそれに伴い急速に普及したZOOM等のテレビ会議システムによって、現地での研修はなくなってしまいました。許せない。
仮にコロナが収まってもテレビ会議システムがあるから研修に行く必要なんてないじゃないかという意見があるかもしれません。しかし、テレビ会議システムでは学ぶことができない研修が現地にはあります。

今年こそ気兼ねなく研修に行けるでしょうか。そろそろ研修が必要な食べたいものや行きたい場所がたまっています。

                      弁護士 竹内 和正




【コラム】アスベスト被害の解決を(弁護士竹内 和正)

令和3年5月17日、アスベスト被害に遭われた建設職人が、アスベスト建材を販売した企業とそれを規制しなかった国を被告として訴えた「建設アスベスト訴訟」について、最高裁は、国と一部の企業の責任を認め、原告勝訴の判決を言い渡しました。提訴から13年と1日が経過していました。僕も弁護団の一員として弁護士になってからずっと訴訟を担当してきました。

この訴訟には多数の原告がいるので、弁護団では各弁護士が担当の原告の方を受け持ちます。今回、最高裁において意見を述べた大坂春子さんは、僕が担当してきた原告の方でした。大坂さんは、アスベストが原因で、大工だった夫と、同じく大工だった息子さんを亡くされています。僕は、「夫と息子を返してほしい。夫と息子に会いたい。」と涙を流しながら話す大坂さんから、何度もしつこく話を聞きだして何通も書面を作り、法廷での尋問も担当しました。大坂さんには、お二人が亡くなった時の様子、特に、息子さんが吐血し、ひきつけを起こしながら「俺まだ死にたくない、やりたいことたくさんある、死にたくない。」と言って亡くなっていったことを何度も話してもらいました。裁判所になんとか被害の重大さを伝えなければいけないという一心でしたが、大坂さんにとっては、あまりにつらい体験だったと思います。

そして、最高裁においても、大坂さんは意見陳述を行うことになり、この意見陳述の原稿も、僕が大坂さんと打ち合わせをした上で書面化していました。しかし、最高裁の法廷において、淡々と被害の実情を話していた大坂さんは、突然原稿から目を離すと、裁判官のほうをしっかりとみて「私は、今でも、かたくなに夫と息子を愛しています。」と原稿にはない思いを語りました。僕は、大坂さんの長く、苦しい裁判闘争を思い、涙が止まりませんでした。法廷で涙を流したのははじめてでした。意見陳述は文字通り意見を述べるだけで、正式な主張書面とは扱われません。しかし、僕は、大坂さんの話が、最高裁の裁判官の気持ちを動かし、原告勝訴の判決に影響を与えたと確信しています。

大坂さんは、裁判をはじめたとき65歳でした。今は77歳になられました。この13年間、大坂さんは、自分のためだけではなく、アスベスト被害者に、自分のような苦労をさせたくないと、何度もくじけそうになる気持ちを奮い立たせ頑張ってこられました。そして、裁判に勝ち、官邸で直接菅総理からの謝罪を受けた上で、裁判を起こすことなく国から賠償を受けられる法律を制定させました。ただ、まだ半分です。建材企業が支払うべき残された損害の賠償を受けなくてはいけません。

亡くなった原告の方々の「生きているうちに解決を」という願いはもう叶いません。僕は、絶対に、国だけでなく、建材企業にも賠償させることによって、全てのアスベスト被害者が全面的に救済される制度をつくらなければならないと誓っています。

弁護士 竹内和正

(事務所ニュース・2021年夏号掲載)




アスベスト被害の解決を(弁護士 竹内 和正)

アスベストによる被害に遭われた建設職人の方が、アスベストの危険性を知りながらアスベスト建材を販売した企業と、それを規制しなかった国を訴えた「建設アスベスト訴訟」が全国各地で争われています。

そして、同訴訟において重要な判決が、2020年8月28日、9月4日と連続して、東京高等裁判所、東京地方裁判所でそれぞれ言い渡され、国や企業の責任が認められました。
現在、国や企業に対し解決を求め交渉をしていますが、「係争中なので対応できません。」との回答を繰り返されています。10年以上、ずっと同じ回答です。
建設アスベスト訴訟を起こした原告の方のうち、提訴後に亡くなった原告の方の人数は250名近くにも及んでいます。僕の担当している原告の方の中にも亡くなられてしまった方がいます。亡くなった原告の方々の「生きているうちに解決を」という願いはもう叶いません。
2020年10月22日、最高裁で建設アスベスト訴訟についてはじめて弁論期日が開かれました。そして、今年、建設アスベスト被害について、はじめての最高裁判決が言い渡される予定です。

せめて、ご遺族が笑顔で墓前に報告できるような判決が言い渡されることを強く望みます。

弁護士 竹内 和正

 

(事務所ニュース・2021年新年号掲載)




ウェブ会議の実感(弁護士 竹内 和正)

新型コロナウイルスの関係で、会議や打ち合わせがネット上で行われるようになっています。スマートフォンにインストールした会議用のZOOMにアクセスし、ブルートゥースを接続したワイヤレスイヤホンをはめて移動しながら会議に参加したときは未来がきたと思いました(今年の初めには知らなかった言葉ばかりです。)。コロナ前からIT化へのながれはありましたが、これをきっかけにさらにインターネットの世界が広がっていくことは明らかです。

ただ、なかなか難しいなという実感があります。

人がいないので別のことをしたり、落書きをしたりしてしまう(いまだに僕のプリントは落書きだらけ・・・)のは、まあ、僕の問題ですし、ウェブ会議に限らないのでよいのですが、他方で、目を見て話ができるということがどれほど重要かということを思い知らされている気がします。慣れの問題もあるかもしれませんが、決定事項の確認や報告はなんとかなるものの、多人数で議論することはなかなか難しいですね。そういう意味では裁判のIT化も進んでいますが、やはり慎重にすすめていく必要があるのだと思います。

また、インターネットの世界が広がっていくにつれて、反対に、インターネット外の世界(とあえて言います)を充実させることがより重要になってくると思います。個人的には、元々SNS関係は怖い人が多いので近寄らないようにしており、さらにコロナ情報の錯綜で疲れてしまったのでインターネット活動の自粛も宣言していますが、例えば休日はインターネット環境を断つというようなライフスタイルを選択する人も増えてくるのではないでしょうか。なんか、もう、これ以上、知らない人とつながらなくてもいいですよね。

弁護士 竹内 和正

 

(事務所ニュース・2020夏号掲載)

 




SNSとの距離感(弁護士 竹内 和正)

SNSがよくわかりません。それぞれの区別もあいまいです。なんか、つぶやいたり、自己紹介したり、写真をみせたりするんですよね。ハッシュタグって、なんでしょうか。僕にもついていますか?動画を投稿したら僕もユーチューバーですか?そもそもユーチューブってSNSですか?・・・いずれにせよ、怖いし、できるだけ関わらないようにしています。公式にはLINEもしていないことにしています(LINEってSNSですか?)。

そして、今のところぎりぎり逃げ切れています。もう、僕がSNSをやらないからって、仲間はずれにされたり、いじめられたりすることもないでしょう(されたらちょっとおもしろいですが)。ただ、これから学生時代を送る人は大変ですよね。ネットの世界は身近で、しかも失敗が許されません。僕が高校生のときに、SNSがあったらと思うとぞっとします。絶対ここにいない気がする。

ネットの世界では、「正しい」ことが一番重要なようです。みなさん全力で間違い探しをしています(ヤフコメの当職調べ)。でも、聞きたいですか?知らない人の正しい話。なんだか息が詰まってきますよね。ほんとハッシュタグつければいいってもんじゃないです。その言葉ハッシュタグつけて返してやるっていいたくなりますよね。

とりあえず、今年もSNSとは関わらず、ヤフコメも非表示にして、できるだけ、ネットから距離を取りたいと思っています。ハッシュタグお断りです。

弁護士 竹内 和正

 

(事務所ニュース・2020新年号掲載)

 




民法改正 消滅時効 (弁護士 竹内 和正)

①一般債権について

債権の消滅時効における原則的な時効期間及び起算点は、債権者が「権利を行使することができることを知った時」(主観的な起算点)から「5年間」、又は債権者が「権利を行使することができる時」(客観的な起算点)から「10年間」行使しないときは、債権は時効によって消滅するとされました(新法166条1項)。改正法では、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年という二本立てが原則とされており、このどちらか早い方の経過によって時効が完成することになります。

②生命・身体の侵害による損害賠償請求権について

生命・身体の侵害に基づく損害賠償請求権は、旧法から長期化され、債務不履行に基づく請求、不法行為に基づく請求のいずれも主観的起算点から「5年間」、客観的起算点から「20年間」に期間が統一されました(新法724条の2)。

時効制度は、社会秩序の安定、証明困難からの救済、「権利の上に眠る者は保護に値しない」ことがその存在理由と言われています。ただ、これらの理由が、権利を消滅させるという、ある意味で暴力的な時効の効果を正当化できるとは思えない事案も存在します。そのような事件を担当する度に、時効制度の意義について考えさせられますが、そうはいっても、注意をしておかないとトラブルに巻き込まれてしまいかねません。権利を失うことがないように早め早めに対応されることをお勧めします。

弁護士 竹内 和正

 

(事務所ニュース・2019夏号掲載)




石橋を叩いて渡る (弁護士 竹内 和正)

昨年は、なんだか、これまでに正面から向き合えずにこなしてしまった仕事が、利子をつけてもどってきたような1年でした。トラブルがおこるたびに、してこなかったり、できなかったりしたことに、一つ一つ向き合うことになった気がします。
矢面に立たないように、「石橋を叩いて人に渡らせる」と友人から評されるほど(※誉め言葉だと思っていました)注意深く生きてきたつもりでしたが、誠実に対応せず、踏み倒した借金は、必ず、後で請求が来るんだなと実感しました。
また、比喩ではなく実際に、生前に父が連帯保証をしていたと請求書も届きました。これもなんとか昨年解決できましたが・・・大変だったな。
当事務所には主流派、反主流派という棲み分けがあり、主流派の条件は実家があまり裕福でないことです。主流派の大看板である梶山先生から「竹内は親父の生命保険で弁護士になった(※これは事実です)」と喜ばれるたびに、僕は梶山先生ほど貧乏じゃなかったので肩身の狭い思いをしてきましたが、今後は堂々と主流派を名乗ることができそうです。

なんとか、無事に今年を迎えられてほっとしていますが、昨年は眉間にしわを寄せていることが多かった気がします。
にこやかでいること。嘘をつかないこと。今年、弁護士になって10年になるようですが(※信じられません)、よい仕事をするために必要だと実感していることです。今年は、できるだけ覚悟をもって、明るく誠実にやっていきたいと思います。

弁護士 竹内 和正