【コラム】会計年度任用職員(弁護士佐渡島啓)

今年二月、司法修習生に公務員の労働問題について講義する機会がありました。この中のテーマの一つが、近年問題となっている公務員の非正規労働でした。

全国平均では地方公務員の約三人に一人が非正規、財政的に厳しい自治体では約二人に一人が非正規のところもあります。仕事の内容に大きな差異はないにもかかわらず、給与は正規職員の半額以下で昇給なし、賞与や退職金もなく、任用期間は半年や一年と短期の繰り返し。

このような状況を改善するために、2020年4月から会計年度任用職員という制度が始まりました。これにより、臨時職員や非常勤職員とされていた非正規公務員は、原則として会計年度任用職員に移行し、期末手当(賞与)の支給が受けられ、フルタイム勤務の場合には退職金の対象ともされました。

ところが、賞与が支給されることになった反面、約四分の一の自治体で会計年度任用職員の給与を減額する措置がとられ、結局年収は増えなかったというケースが出ています。また、それまでフルタイムで働いていた非正規の勤務時間をわずかに減らしてパートタイムとし、退職金の対象としないようにした自治体もあります。

非正規の期間が五年を越えても無期転換する権利が発生しないことは、会計年度任用職員制度になっても変わりません。経験を積んだベテランとなっても、会計年度任用職員のままでは、いつ仕事を打ち切られるか分かりません。
このような働き方を余儀なくされている人達に、役所や保育園、学校、病院、図書館など私たちに身近で、生活に欠かせないインフラを支えてもらっている社会がこのままで良いのか、改めて考える必要があると思います。

弁護士 佐渡島 啓

(事務所ニュース・2022年夏号掲載)