実録!詐欺師からの電話(弁護士 竹内和正)

仕事中、僕の携帯電話に+81の電話番号から国際電話がかかってきました。基本的に、知らない番号からの電話にはでないのですが、あまりの忙しさから勢いで電話に出てしまったところ、警察を名乗る者からの電話でした。
警察官は、僕の名前と住所を正確に述べた上で、「去年の8月9日に楽天カードで作られたあなた名義のカードが詐欺の犯人宅でみつかりました。警察の手続きに従わないと、財産をすべて没収されることになります。」と言いました。「えー!財産をすべて没収ですか!?そんなことができるんですか!?」と話を続け、受け子の人に法律事務所まで没収しにきてもらおうかと思いましたが、住所まで知られているからなと思いなおし、名前と所属を聞いてこちらからまたかけなおしますと電話を切りました(なお、警察官は電話をきることを強硬に拒んできました。きっと、電話は切らせてはいけないというマニュアルになっているのですね。)。
突然の電話には、とにかく一度電話を切って周囲の人に相談することが大切です。
詐欺師の手は弁護士のところにまで及んできています。みなさん、気を付けましょう。

弁護士 竹内和正




万城目学さん「八月の御所グラウンド」(弁護士 伊須慎一郎)

別れを告げられた彼女から、「あなたには、火がないから」と告げられた大学生。

ちゃんと生きていない大学生の心に炎を着火したのは、戦争で命を奪われた3人の男たちだった。

鴨川ホルモー」で「ゲロンチョリー」と言っていた万城目さん、小説家って、奥深いですね。

私は、「たまひで杯」第三戦、1点リードした7回裏、それまでサイドスローで投げていた「えーちゃん」がオーバースローから、つむじ風を巻くようなフォームで快速球を投げ込む場面に感情移入します。

そのダイナミックなフォームと快速球を奪ったのは誰か。

是非、みなさん、読んでください。

弁護士 伊須慎一郎




趣里と笠置シヅ子(弁護士 髙木太郎)

最近、ずっとNHKの朝ドラを見ている。
3月で終了するが、今は、「ブギウギ」。戦後、「東京ブギウギ」で一世を風靡した、笠置シヅ子をモデルにしたドラマだ。

1961年生まれの私でも、「歌番組にコメンテーターで出ていた、人の好さそうな小母さん」というイメージしかなかったが、戦前、戦中、戦後を生き抜いた大歌手だったということを知った。
弟は戦死している。「お国のため」と歌う「大空の弟」は、失意の笠置に服部良一が送った曲とのこと。軍歌ゆえに戦後忘れられていたが、背景を知れば、遺族の悲しみ、苦しみもより伝わる。

趣里は秀逸だった。笠置シヅ子はこんな人だったに違いないと、自分の中の笠置シヅ子像が趣里によって出来上がってしまった。
オーディションで、歌はイマイチだったが、その演技力ゆえに採用されたらしい。
歌もその後の特訓があったそうで、すばらしいものだった。伊藤蘭水谷豊の娘だから、歌の才能もあったのでしょう。

4月からは、日本初の女性弁護士、女性裁判官である三淵嘉子をモデルにした「虎に翼」。
自分の毎朝のルーティンに変更はない。

弁護士 髙木 太郎




【コラム】よろしくお願いします。(弁護士 宮本澄香)

はじめまして、2022年12月より埼玉総合法律事務所に入所いたしました、弁護士の宮本澄香(みやもとすみか)と申します。

フレッシュ新人弁護士としてご挨拶したいのですが、社会人経験を経て弁護士となったため、既に30歳をいくつか過ぎており、初々しさを前面に出してご挨拶するにはややはばかられる面があります。

出身は京都ですが、物心つかない内に奈良に移り、その後は北海道(札幌)、東京、そして埼玉と移り住んできました。
「都」「道」「府」「県」と名の付く場所に、少なくとも一度は住んだことがあるというのが、密かな自慢です。

私は、大学卒業後、約5年間障害者福祉施設(就労支援施設)の支援員を務めていました。社会福祉士及び公認心理師の資格も保有しています。

前職の仕事は、弁護士業とは全く違う分野と言われることも多いのですが、対人支援職という点では共通する部分が多いと感じています。
アプローチの方法は違えども、ご依頼者の方と対話しながら、人生を前に進めるお手伝いをするという点において、両者には似た部分があるのではないでしょうか。

前職の経験もあり、障害者の権利問題や、ひきこもり問題等に興味があります。
また、学生時代は美術部に所属しており、美術への興味関心から著作権関連事件も積極的に引き受けていきたいと考えています。
とはいえ、新人時代には一つの分野に拘らず、多様な事件に関わることで成長していきたいと思います。
今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

弁護士 宮本 澄香

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】弁護士1年目を振り返って(弁護士 深谷直史)

今年の5月で、弁護士になって1周年を迎えることができました。2年目に突入です。
1年間、長いようで短かったような気がします。今年に入ってからも、心に残る出来事はたくさんありました。

1月から3月にかけては、法教育イベントに参加して毎週のように小中学校に行っていました。
生徒たちには、課題発見の授業と称して、「ルール作り」や「議論のしかた」について学んでもらいます。
普段の学校の授業で習わないことですので、子どもたちも一生懸命に考えて意見を言ってくれます。
みんなとても積極的なので、弁護士は傍で見ているだけのことが多いです。

学校教育のシステム上、「どんな校則も守らないといけない。」「先生の言うことやルールは絶対だ。」と思ってしまっている生徒たちも非常に多いです。
法教育の授業では、弁護士が教室にやってきて、生徒たちに、「本当にこの校則は要るのかな?」、「どんなルールがあるといいかな?」と問いかけ、生徒たちの新たな視点と自主性を育むことを目的としています。将来の日本の民主主義を担う子どもたちを育てる一助になっていると思って、これからも法教育の活動は続けていきたいと思います。

今年度は、ご縁もあって、埼玉弁護士会の調査局も務めることになりました。
尾崎執行部のもと、様々な弁護士会主催のイベントのお手伝いもしています。
目の前のことに一生懸命に取り組み、新しいことにもチャレンジする2年目にしたいと思います。

弁護士 深谷 直史

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】入管法改定(弁護士 鈴木満)

本年6月9日、多くの反対がある中、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改定案が参議院本会議で強行採決により可決され、成立してしまいました。

私は、この改定の内容には、様々な問題があると考えていますが、その一つが、改定前から存在する、送還停止効と呼ばれる難民認定申請者に対する強制送還を禁止する定めに例外を設け、3回目以降の難民認定申請者は、一部の場合を除き、難民認定手続き中であったとしても送還が可能となる点です。

難民認定申請者の子どもたちの中には、現時点で、すでに2回以上難民認定申請を行っている子どももいます。また、日本で生まれ育った子どもであっても、すでに3回目の難民認定申請手続きを終えた子どももいます。

そのため、改定された入管法では、日本で生まれ育ち、他の国にも行ったことがないような子どもですら、その意に反して、日本から退去させられる可能性があります。

アメリカでは、大学等で、非自発的な帰国が青少年に与える影響について研究がなされているそうです。
その研究では、強制送還のような非自発的な帰国は、青少年の成長過程に大きなマイナスの影響を与えるだけでなく、心理的な衝撃を与え、長期的な精神的トラウマを生む極めて非人間的なものであると認識されているそうです。

改定された入管法の施行は来年ですが、今回の改定によって、非人道的な不当な扱いを受ける外国人が増えないように、今後の動向を注視していきたいと思います。

弁護士 鈴木 満

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】付添人活動(弁護士 南木ゆう)

少年事件における付添人活動は、成人の刑事事件の弁護活動と重なる部分もありますが、より多岐にわたります。
それは、少年法の目的が、処罰ではなく「健全育成」にあり、付添人の活動の目的が、「少年の更生」の援助にあるからです。

昨今、特殊詐欺の受け子・出し子や、組織的な強盗事件の実行犯役に少年が関与している事件が多くなってきています。
SNSの普及によりバイト感覚で容易に犯行に至ってしまうという問題点が指摘されていますが、少年事件に付添人として携わっていると、やはり家庭環境の影響が大きいことを実感します。

家族との関係が上手くいっておらず、家庭に居場所がない少年や、両親を早くに亡くし、適切な保護者不在のまま社会から取り残されている少年にも出会います。
このような少年は、得てして自己肯定感が低く、将来の夢を持つことも、自分の人生を大事に思うこともできなくなっています。

付添人として、少年に様々な視点から働きかけることはもちろんですが、社会資源(少年の更生に役立つと思われる全ての人的・物的資源)をいかに開拓するかというのも付添人の大事な活動の1つです。
自分の責任だと落ち込んでしまっている母親を励ましたり、「少年院で叩き直してもらえば良い」等と保護者としての責任を放棄して、面会にすら行こうとしない父親を説得することもあります。

自己満足かもしれないとは思いつつも、最近は3ヶ月に1回、適切な保護者のいない少年の授業参観や行事に参加するため少年院に通って、少年の成長を見守っています。

弁護士 南木 ゆう

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】親なき後(弁護士 月岡朗)

2023年6月2日と6月26日の2日間で、日本弁護士会連合会埼玉弁護士会の共催で、「親なき後について、弁護士とともに考える」とのセミナーを実施しました。

障害のあるお子様をお持ちの親御様にとって、将来、自分が亡くなった後のことは大変重要な問題かと思います。
残されたお子様の生活はどうなるのか。親なき後、誰がお子様の面倒をみるのか。
簡単に答えの出ることではないけれど、そのような不安や悩みを親御様と一緒に考えていきたいと思い、上記のセミナーを開催しました。

セミナーでは、民事信託成年後見制度等の法制度に関する講演に加えて、お子様の今の生活を守っていけるように、親御様が元気なうちにお子様に合う支援者を探すことの大切さや、親御様から支援者にお子様の様子を伝えて、支援者がお子様を理解した上で支援することの重要性が話されました。

また、グループディスカッションも行い、多くの親御様から多くの質問が寄せられました。
寄せられた質問に弁護士が答えていくなかで、親御様と弁護士で、お互いの人となりや性格が見えてきたのではないかと思います。支援する側と支援される側の間では相互理解が重要ですが、今回のグループディスカッションは親御様と弁護士の相互理解を深めるひとつの方法と感じました。

今後も、親御様やお子様との交流を継続し、親御様やお子様と一緒に、よりよい支援を考えていけたらと思います。

弁護士 月岡 朗

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】ドキュメンタリー映画『教育と愛国』を観て(弁護士 谷川生子)

今年4月の埼玉弁護士会主催「憲法と人権を考える市民の集い」は、ドキュメンタリー映画「教育と愛国」(斉加尚代監督)の上映会でした。
戦後、教育と政治は一線を画してきたはずですが、教科書検定制度等を通じてじわりじわりと政治が教育に介入し、そのスピードが加速している現実を知ることができました。

小学1年生の教科書の「パン屋」で友達と会うという記載について、2017年、国や郷土を愛する態度として不適切、という検定意見がつき、教科書会社が「パン屋」でなく「和菓子屋」に変更したエピソード。
2006年、教育基本法の改正により第2条にいわゆる愛国心条項が定められ、政治による教育現場に対する圧力が確実に強まってきたことがわかります。
内閣の閣議決定を受けて、「従軍慰安婦」「強制連行」などの用語が一部の教科書で変更されたことも記憶に新しいところです。

このような「愛国心」を目標に掲げる教育は、嫌でも戦前の軍国主義教育を想起させます。
私自身、小学校の道徳の授業で、みんな仲良く、という教えを受けましたが、今の子どもや教師が置かれている状況は当時とは異なるように感じます。
国のためではなく、子ども達のために日々奮闘している教師が、政治に翻弄され、疲弊する教育現場で、子ども達が自由に個性を伸ばし、健全に成長するとは思えません。
 
集会では、製作者から取材時のエピソードなどを聞くことができ、様々な障壁を乗り越えて作られた貴重な作品であることもわかりました。
メディアが正面切って政府のやり方を世に問うことが難しい時代、このような作品がもっと多く作られたらと思いました。

弁護士 谷川 生子

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】労働局での調停手続(弁護士 佐渡島啓)

パワハラ防止措置(相談窓口の設置など)が全事業主で義務化されてから1年以上になりますが、パワハラに関する法律相談は残念ながら減っていません。
上司や同僚から被害を受けている、加害者として訴えられてしまったといった相談はもちろんですが、顧問先の会社などからは、社内で生じたパワハラトラブルにどう対処すべきか分からないといった相談も多く寄せられます。
この裏側の問題として、パワハラ被害を会社に申告したのに会社が適切に対処してくれないという相談もあります。

しかし、被害者がその会社で働き続けることを希望している場合には、弁護士を代理人に立ててまでして、会社と交渉したり、ましてや裁判をおこなうことには躊躇する方が少なくありません。
このような場合には、労働局に、会社との調停を申請することも解決のための選択肢として考えられます。

この調停手続は、原則として1回、2時間程度の期日で解決することを目指す制度で、私もこの調停の調停委員を務めています。
今年の春に私が担当した調停では、パワハラ被害を度々上司に訴えていたのに放置され続けたという事案で、調停手続に参加した会社の担当者に会社としての落ち度を説明して納得してもらい、一定の和解金を支払うことで調停を成立させることができました。

調停手続には強制力がないため、パワハラ被害者が調停を申請しても会社が手続に参加しない、あるいは、調停手続に参加しても調停成立には至らないケースもあるという限界はありますが、もっと広くこの制度を皆さんに知っていただき、いざというときには利用を検討してもらいたいと思います。

弁護士 佐渡島 啓

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)