【コラム】付添人活動(弁護士 南木ゆう)

少年事件における付添人活動は、成人の刑事事件の弁護活動と重なる部分もありますが、より多岐にわたります。
それは、少年法の目的が、処罰ではなく「健全育成」にあり、付添人の活動の目的が、「少年の更生」の援助にあるからです。

昨今、特殊詐欺の受け子・出し子や、組織的な強盗事件の実行犯役に少年が関与している事件が多くなってきています。
SNSの普及によりバイト感覚で容易に犯行に至ってしまうという問題点が指摘されていますが、少年事件に付添人として携わっていると、やはり家庭環境の影響が大きいことを実感します。

家族との関係が上手くいっておらず、家庭に居場所がない少年や、両親を早くに亡くし、適切な保護者不在のまま社会から取り残されている少年にも出会います。
このような少年は、得てして自己肯定感が低く、将来の夢を持つことも、自分の人生を大事に思うこともできなくなっています。

付添人として、少年に様々な視点から働きかけることはもちろんですが、社会資源(少年の更生に役立つと思われる全ての人的・物的資源)をいかに開拓するかというのも付添人の大事な活動の1つです。
自分の責任だと落ち込んでしまっている母親を励ましたり、「少年院で叩き直してもらえば良い」等と保護者としての責任を放棄して、面会にすら行こうとしない父親を説得することもあります。

自己満足かもしれないとは思いつつも、最近は3ヶ月に1回、適切な保護者のいない少年の授業参観や行事に参加するため少年院に通って、少年の成長を見守っています。

弁護士 南木 ゆう

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】男女共同参画社会へ(弁護士南木ゆう)

弁護士10年目(親になって8年目)となりました。日弁連設立当初(1950年)は、弁護士総数5,827人のうち女性はわずか6人(全体の0.1%)でしたが、2020年には弁護士総数42,164人、うち女性は8,017人(全体の19.0%)となったそうです。女性弁護士の数は飛躍的に増加していますが、日々の業務においては、まだまだ女性弁護士が足りていないと感じる場面が多々あります。性被害やDV問題に限らず、また男女を問わず、同性の弁護士に相談したいというニーズもあり、私も女性からの相談を多く受けています。

国は、「指導的地位に占める女性の割合を2020年に30%にする」という目標を定め、法曹三者も各々取組みを行ってきましたが、裁判官27.2%、検察官26.0%、弁護士19.0% といずれも目標を達成できず、特に弁護士が目標を大きく下回りました。

女性弁護士は、家庭との両立を考え企業へ就職する人も多いので(企業内弁護士の女性の割合は40%超)、当事務所のような「まちべん」といわれる法律事務所では女性の割合はもっとずっと低いようです。

そんな中、当事務所に女性弁護士が1人増えました!(本原稿執筆時には予定)。幅広い分野に取り組み、人権問題や社会問題にも携わっていきたいという志を持つ素敵な女性です。 様々な場面で、男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができる社会を目指し、私も目の前の小さなことから変えていきたいと思います。

弁護士 南木 ゆう

(事務所ニュース・2023年新年号掲載)




【コラム】平和について考える(弁護士南木ゆう)

 毎年、8月になると否が応でも戦争のことを思い出す、唯一の被爆国である日本人は、そんな感覚の人が多いのではないでしょうか。

私も、戦時中小学校の教師をしていた亡祖母から、空襲の話や学童疎開の話を繰り返し聞きました。また、修学旅行で広島に行ったときは、被爆者の方から直接体験談を聞き、トラウマになるほどの強烈な思い出になりました。

飜って、今の子供たちに戦争はと聞けば、今年の2月に始まり、いまだ終結の兆しが見えないロシアのウクライナ侵攻になってしまったようです。今は、当時の戦争とは異なり、インターネットやテレビをつければ、リアルタイムで多くの映像や情報で溢れています。しかし、ドローンからの俯瞰の映像からは、現実の悲惨さがあまり伝わらず、どこか現実離れしたゲームの世界のように感じられます。たくさんの情報に接すると、物事を理解した気になってしまいがちですが、見たことが全てではなく、その背後にどのような人たちの暮らしがあったのか、どのような残虐な殺戮が日々起きているのか、想像力を働かせないと、なぜ戦争がダメなのか本当の意味が理解できないのではないかと考えています。そろそろうちの子供たちにも「はだしのゲン」を見せようかな、「アンネの日記」も良いね、「夕凪の街 桜の国」も見せたいな、一緒に「丸木美術館」にも行きたいな・・・など、私なりの戦争教育を考えている今日この頃です。

弁護士 南木 ゆう

(事務所ニュース・2022年夏号掲載)




【コラム】 ワーク・ライフ・バランス(弁護士南木 ゆう)

ワーク・ライフ・バランスとは、「仕事」と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動などの「仕事以外の生活」との調和をとり、その両方を充実させる働き方・生き方のことです。内閣府の調査では、既婚・独身問わず、男女ともに、ワーク・ライフ・バランスが図られていると考える人の方が仕事への意欲が高い傾向にあるそうです。

私はといえば、今年は「仕事」の比重がやや高く、十分に育児や趣味など「仕事以外の生活」を楽しむことができなかったように思います。特に最近は、コロナの影響からリモートワークが進み、場所や時間を選ばず効率的に仕事ができるため、今まで参加できなかった夜の会議にも参加することができるというメリットがあった反面、耳は仕事、手は育児といった具合に仕事の「オン」と「オフ」の境界が曖昧になり、仕事以外の日常生活に大きく仕事が割り込んできた1年でもありました。

私の両親は、「ゆうゆう」と生きられるようにと私の名前を「ゆう」と名付けました。「ゆうゆう」とは、ゆったりと落ち着いたさま、十分に余裕のあるさま、をいいますが、昨年は名に恥じて、毎日セコセコと落ち着かず、余裕のない1年を過ごしてしまったように思います。

チャンスを無駄にせず、何でもやってみたいという思いで仕事に取り組んできましたが、今年は、長女が小学校に入学する節目の年でもあります。「仕事」と「仕事以外の生活」のバランスを今一度見直してみようと思っています。

弁護士 南木 ゆう




【コラム】離婚事件(弁護士南木 ゆう)

弁護士になって様々な事件に携わらせて頂いていますが、私が女性だということもあり、女性側からの離婚事件をご依頼頂くことが多いです。

社会に目を向けると、教育の場面で、入学試験に男女の合格点の差が設けられていたり、婚姻においては、夫婦同姓を強制している日本の法制度の問題、育児においては、母親に偏重する日本の育児習慣や育休制度の男女差別の問題など、社会のあらゆる局面で放置され続けてきた男女不平等の問題が山積しています。
今は、結婚後も仕事を続ける女性がほとんどですが、出産を機に退職をする、あるいは子育てのために時短勤務にしたり、負担の軽い仕事に転職するという女性は少なくありません。このような場合、女性側は簡単に離婚を決断することができません。自身に経済力がないことから、配偶者から酷い扱いを受けたとしても耐え続けるしかないと思ってしまうのです。

彼女たちは、毎日家族のために必死に家庭内で働いています。しかし、そんなことは当然だと言わんばかりの夫の態度。このような人に、いざ離婚を突きつけると「寝耳に水だ。」とか「家事をろくにやっていなかったくせに。」等と言ってきたりします。
離婚事件が解決したときに、最初思い詰めて相談にいらしたときと見違えるような晴れやかな表情をしている彼女たちの顔を見ると、私も何より励みになります。今後も微力ながら、家庭内の不平等で苦しんでいる女性が少しでも救われるように積極的に離婚事件に取り組んで参ります。

弁護士 南木ゆう

(事務所ニュース・2021年夏号掲載)




withコロナの子どもたち(弁護士 南木 ゆう)

いつも保育園のお迎え時間ギリギリにダッシュで滑り込むので、5歳の娘からは「最後の一人になるのは嫌だ。」となじられていました。そこで昨年は目標を「計画的に」と定めて、余裕を持ってお迎えに行こうキャンペーンに取り組んできました。しかし、思いがけず新学期早々保育園が休園となってしまい、「早く保育園に行きたい~」と言われる始末。「それならば保育園よりも楽しい遊びを!」と知恵を絞って、家の中でスタンプラリーを開催したり、駐車場にテントを張ってアウトドアランチをしたり、電動チャリを飛ばしてあまり人の集まっていない公園まで遠出したり、毎日子どもをいかに楽しませるかということに頭を使いました。

年に1度行っていた旅行は昨年どこにも行けず、思えば一昨年末の事務所旅行で行ったベトナム旅行が最後になりました。ハノイの市街地で乗ったシクロという自転車タクシーで撮った臨場感溢れる動画をヘビロテしながら、エア旅行を楽しんでいます。

2歳になった息子は、知識をスポンジのように吸収し、毎日新しい単語を発して大人たちをびっくりさせていますが、昨年の我が家の流行語大賞は、2歳児から事あるごとに発せられる「コロナノカンケー」でした。

弁護士 南木 ゆう

 

(事務所ニュース・2021年新年号掲載)

 




コロナ自粛下からみえた子育て世代の問題(弁護士 南木 ゆう)

新型コロナウイルスの感染拡大で、様々な社会活動に影響が出ていますが、働きながら子育てをしている世代は、何より保育園、幼稚園、小学校が自粛となったことが大変だったと思います。徐々にですが再開し始めて、一息つかれているご家庭も多いと思います。お疲れさまでした。私も夫と1日交代で勤務と子守を行っており、短い時間の中で普段と同じパフォーマンスを発揮するためにご褒美お菓子制度を導入し、かつ、1日おきのステイホームでエネルギー消費を最小限に抑えていましたので、人間として一回り大きくなれた気がしています。

この間法律相談では、解雇や退職勧奨、給料不払いの問題が多数寄せられていました。特に、子育て中の時短勤務ママさんたちが、真っ先にクビを切られそうになっているという相談が多く、胸が痛みました。少子化もそうですが、現在共働きの家庭が増えています。企業としても、子育てと両立しやすい環境を整え、子育て世代こそ大事にしていかなければ、今後いい人材が確保できなくなってしまうという現状をもっと理解する必要があります。むしろ、リモートワーク等によって、子育て世代にも活躍できる場が広がったという側面もあり、コロナ下の対応には企業の未来がかかっているといっても良いと思います。業績が悪化したら、弱い立場の人を安易に切り捨てるというのではなく、それぞれの職種にあった新しい働き方を知恵をしぼって考える必要があります。バリバリ働くママ友さんたちからは、「意外に家でもできたね。」という感想をたくさん聞きます。ITに疎い上司には、むしろ「こんな働き方ができるよ!」ということをどんどん提案していくのも良いかもしれません。

弁護士 南木 ゆう

(事務所ニュース・2020夏号掲載)

 




時間の使い方(弁護士 南木 ゆう)

新学期が始まる前日の夜に宿題を始めるタイプでした。親にはいつも、計画的に宿題を済ます姉と比較され、「嫌なことは先にやってしまった方が、気持ちよく遊べるでしょ!」と怒られましたが、宿題が山積みでも気持ちよく遊べるタイプでした。それでも、子どもの頃は半べそになりながら、次は余裕を持ってやることを誓いましたが、計画を立てるだけで満足してしまって、教訓が次に活かされることはありませんでした。

きっと大人になったら、この性格も変わるだろうと高をくくっていましたが、大人になったら、期限にも「とりあえずの期限」と「本当にヤバイ期限」があることや、むしろ精神的に追い込まれた方が火事場の〇〇力的な集中力を発揮して、少ない時間で良いものができ、効率的じゃない!!という解釈も知ってしまい、結局このクセが治っていません。

余裕がなくなったときは決まって機嫌も悪くなるので、家族は「まただよ。」と呆れ顔ですが、追い込まれて追い込まれた末に、完成したときの開放感は格別です。本年も、「本当にヤバイ期限」を見極めて、楽しく生きていこうと(「とりあえずの期限」を過ぎたこの原稿を書きながら)思っています。

弁護士 南木 ゆう

 

(事務所ニュース・2020新年号掲載)

 




民法改正 自筆証書遺言(弁護士 南木 ゆう)

①全文自書の変更
今まで、自筆証書遺言は、遺言書の全文を自書する必要がありました。全文を自書するというのは結構大変な作業で、書き間違えや、判読不能な字があったために、トラブルになることも少なくありませんでした。
今後も、本文部分(1頁目)の自書は変わらないのですが、自書した本文に、自書によらない相続財産の目録を添付することが認められるようになりました。例えば、代筆やパソコンで作成した財産目録でも良いですし、不動産の登記事項証明書・預貯金の通帳の写しを目録として添付するのでもOKです。添付した目録には、各頁に署名、押印が必要です。

②自筆証書遺言の保管
今までは、保管してくれる場所がなかったので、書かれたはずの遺言書が見つからない、これ本当に本人が書いたの?というトラブルも起こっていましたが、2020年7月10日からは管轄の「遺言書保管所」に保管の申請ができるようになります。
自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続を経なくてはならないという煩わしさもありますが、この保管制度を利用した場合は検認も不要となります。
もっとも、保管の際には方式などの外形的な事項の確認しか行われませんので、遺言の内容を確実なものにするには、ぜひ弁護士にご相談下さい。

弁護士 南木 ゆう

 

(事務所ニュース・2019夏号掲載)

 




欲を張る(弁護士 南木 ゆう)

2018年4月に第二子を出産し、子供が2人になりました。子供が2人になっても大変さが2倍になる訳ではないと聞きますが、お姉ちゃんのイヤイヤ期と赤ちゃん返りもあって大変さは4倍になった気がします。
でも、2人で一緒にキャッキャ笑い転げて遊んでいるときの可愛さも、大変な1日を終え2人が並んで寝ているところを見る幸せな気持ちも4倍になりました。
弁護士としては、6年目を迎えます。子育てをしながらも仕事を続けるということは、私にとっては非常に大事なことですが、周囲の理解とサポートなしにはできません。いつも暖かい言葉をかけて下さる依頼者の方々や、気遣いフォローして頂いている事務局さん・先生方に感謝しています。子供が小さいうちは、急に休まなくてはいけないこともあるので、大きなチャレンジはできませんが、初心を忘れず、当事務所だからこそ関われる大きな事案にも意欲をもって取り組みたいと思っています。
また、昨年(2018年)1年は、自分の自由な時間がとれなかったので、今年は仕事と子育てだけでなく、テニスも再開したいし、美味しいお酒も飲みに行きたいし、あ!あの先生今度奢ってくれるって言ってたな…と欲がつきませんが、本年もよろしくお願いいたします。

弁護士 南木ゆう