【コラム】希望が持てる社会に(弁護士 梶山敏雄)

事件は世相を映すと言います。人が一生で一度あるかどうかという出来事を常に扱う弁護士でも、昨今発生する事件を見ると、昔では到底考えることもできなかった事件が起こっています。

海外からSNSを駆使して犯罪を指示する、白昼堂々と目撃者多数の面前で強盗事件、これほど報道されているにも拘わらず次々と闇バイトにかかわる、「何で自分だけが」と己が人生に絶望して無差別に他人を殺傷する。
そしてその実行犯には若者が多い。そうした原因には現在の日本の若者が置かれた貧困・格差・差別、頑張れば未来がという、昔の「若者たち」の歌詞の「君の行く道は希望へと続く」という、生きる事への期待が持てないなどの根本問題が潜んでいることは間違いないでしょう。

そのような根源的な問題の解決のためにこそ政治の力が使われなくてはならないのに・・・・。
自分の子供を世襲のために秘書官に起用し、官邸で親族の忘年会を平然と行う政治家にはそうしたことを求めることが無理なのかもしれません。

難民の生命をより窮地に追い込む法案、あの惨禍を忘れた原発再稼働を堂々と認める法案、わざわざ問題が発生すること必至のマイナ保険証を強行する法案、そして極めつけは膨大な額に昇る軍事拡大予算を強行しての国会閉会。
次々と国民の生活無視の法律が数多く成立しましたが、マイナ保険証などはそれを利用した犯罪が発生すること必至ということで返納運動が起きているようです。
未だ未だ抵抗するエネルギーと方法が国民に残っていると思います。

弁護士 梶山 敏雄

(事務所ニュース・2023年夏号掲載)




【コラム】軍事費増大は絶対にダメ(弁護士梶山敏雄)

昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻から間もなく1年が経過していようとしています。それに伴う物流問題・資源問題・物価高などの影響は世界的規模に及び経済的大不況を招く危険性も言われています。しかし、なによりも多くの人命が奪われる「戦争」の悲惨さ、理不尽さに最も心が痛みます。

北朝鮮の度重なる挑発的ミサイル発射は言語道断ですが、そうした現象を口実として「敵基地攻撃能力」の整備が必要だと主張する勢力があります。しかし、いくら整備をしたとしても完全な迎撃など不可能としか思えません。逆にそれは積極的に戦争を引き起こす危険性を創り出すことであり、そのために莫大な軍備増強の費用を、所得税などを増税して国民から巻き上げて注ぎ込もうとしています。

自分が納めた税金が人を殺すための武器製造のために使われることなど絶対に認めることができません。軍事費増大を阻止するために100円でも1000円でも良いから、1人1人が納税を拒否して戦争反対の意思表示を示せる国民運動などのアイディアを、誰か、若い人達の柔軟な頭で出してくれませんか。

何が目的でも、例え防衛目的であっても、どんな口実であっても、戦争は絶対に引き起こしてはなりません。誤解を恐れずに言えば、戦争が人と家族に及ぼす悲惨さと比較すれば、人間の叡智を信じて、平和外交の努力をして、それでもの場合は「座して・・・・・」もありかなと思います

弁護士 梶山 敏雄

(事務所ニュース・2023年新年号掲載)




【コラム】追悼 宮澤先生との思い出を振り返る(弁護士梶山敏雄)

2022年2月22日の2の並ぶ日に宮沢洋夫弁護士が、東日本大震災と同じ日の3月11日に元事務所所属の城口順二弁護士がと、我が事務所の礎を築いた両先生が相次いでお亡くなりになりました。亡くなる日のことまで私達にしっかりと記憶させる先生達です。

全国各地に民主的事務所の設置をということで、宮沢弁護士が昭和48年に東京の事務所から埼玉に移って宮沢法律事務所を設立し、昭和50年に埼玉総合法律事務所と名称を変更。宮沢弁護士は埼玉で業務を始めてからも、四大公害訴訟、大宮三菱原子炉撤去訴訟、福島・水戸原発訴訟、新幹線認可取消訴訟などなど語り尽くせぬ難事件に取り組み、城口弁護士も狭山事件や埼教組弾圧事件、全国スモン訴訟を担当し、2人とも全国どころか海外調査にもしばしば出かけ、私が入所した昭和53年頃はなかなか顔を会わせることも少ないという事務所の状況でした。
宮沢弁護士は陸軍士官学校60期、狭山市の士官学校に来襲する米軍の飛行機2機とついでに日本の飛行機も高射機関銃で間違って撃ち落とし(本当の話のようです)、終戦後には裁判所の書記官に採用されたが労働組合運動でレッドパージされて処分撤回訴訟を闘い復職、その後は最高裁書記官、そして弁護士へという波瀾万丈の人生です。でも現在の若手弁護士が入所する頃には好々爺然とした柔和な雰囲気を、誰が言っても終生辞めることをしなかったタバコの煙と共に漂わせた宮沢先生です。私も間もなく事務所在籍45年となり、お二人の足元には及ぶべくものではありませんが、最後にお二人とおいしいお酒を酌み交わしたかったものです。

弁護士 梶山 敏雄 

(事務所ニュース・2022年夏号掲載)




【コラム】まだまだ諦めずに(弁護士梶山敏雄)

昨年の総選挙の結果は、当選者の數だけを見れば落胆するような内容ではありました。メモを読むだけで国民に向けて何も語らず支持率が急落した管政権、繰り返される贈収賄の連続、コロナ対策の後手後手などがありながらもの国民の選択の結果でした。

選挙権を得てから50数年間、「今度こそは」と思いながら投票をしてきましたが、1970年前後の東京や京都・大阪の革新都府政の実現などが続き「もしかすると」などと心躍ったのは、はるか昔のこととなりました。埼玉県でも「憲法を暮らしに生かそう」と言う垂れ幕が県庁に掲げられた時期もあり、「コンクリートから人へ」という言葉が多くの国民の心を揺さぶり、自民党政権が倒れた事も一時期はあったのです。

しかし、自公政権の選挙民を巧に取り込む力はやはりすさまじいものがあります。毎年10数億円という官房機密費なる得体の知れない資金や政党交付金を使い、広島では法務大臣逮捕という選挙買収をしながら又もや新潟でも「票を金で買う」という醜い争いが暴露されています。コロナ禍による財政出動に群がって多大な利益を貪る企業グループも後を絶ちません。いずれも国民の血税が使われているのです。権力と税金を自由に使える者が支配する社会であってはならないと思いませんか。未だ未だ諦める訳にはいきません。

弁護士 梶山 敏雄




【コラム】忘れない(弁護士梶山敏雄)


昭和39年に東京オリンピックが開催された時は私は高校1年生であり、故郷福島出身のマラソン円谷やバレーボール東洋の魔女、棒高跳びの真夜中の激闘などなど相当興奮したのを忘れません(すみません。誰かの国会発言と同じことを言ってしまいました)。ところが一方、オリンピック開会直前のNHKアンケートでは「オリンピックは結構だが、私には別になんの関係もない」が「56.8%」との結果もあったとのことであり、コロナ渦での苦境に喘ぐ現在の国民の声も似たようなものであると思います。

専門家の意見も無視してひたすら「開催」に向けて突き進む管自公政権の姿は「やってしまえば国民は忘れてしまう」などのいつもの権力者の愚弄作戦です。自分達で制度を作った家賃給付金を自ら騙し取るキャリア官僚の出現は、立て続けの政治家の贈収賄や選挙買収、桜を見る会の税金私物化、高級官僚への接待や政治家へのゴマスリとソンタクに明け暮れる上司らの姿を見ている当然とも言える結果でしょう。「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と語り命を絶った誠実な男性(赤木さん)の家族の、血を吐くような訴訟提起により少しづつ真相が明らかになりつつあります。私達はそのような権力者のやった悪事を絶対に忘れてはならないし、間もなく来る総選挙で何としてもそうした輩を追放する必要があります。

弁護士 梶山敏雄

(事務所ニュース・2021年夏号掲載)

 




SDGs(エスディージーズ)(弁護士 梶山 敏雄)

 

私のような齢になると、必然的というかやむを得ないこととは思いますが、この時期には身内を初め、親しい知人・友人、恩師、依頼者の人などの喪中のお知らせが続きます。「あの人がなぜ・・・・」と愕然とすることもあります。一方で年々大人に育っていく孫娘の姿を見ると、考えもできなかったコロナ禍や天候不順による自然災害などに、これから長年に亘り立ち向かわなくてはならない子供達の未来はどうなるのかなどを考えてしまいます。

SDGsは子供達の未来のためにも、貧困や飢餓、働きがい、経済成長、気候変動など、世界が抱えるさまざまな課題について、先進国と途上国を問わず、世界が一丸となって達成すべき17つの目標を国連サミットで策定したものです。本来は国はそうした目標に向けて知恵を絞り出す役割を担うものだと思いますが、我が国の権力者は、森友・加計学園問題、河井元法相夫妻の犯罪、検事総長・学術会議の違法人事介入、「桜を見る会」などの政治の私物化について「答えは差し控えます」と自己保身に汲々とし、話す時は下を向いて原稿を読むだけ、というのが首相の仕事であるかのようなこの国の不幸を、やはり変えなくては子供達の自由な未来はないと、改めて思わされます。

弁護士 梶山 敏雄

 

(事務所ニュース・2021新年号掲載)

 




コロナと変化(弁護士 梶山 敏雄)

新型コロナは私達のこれまでの日常を根底的なところから考え直させる様々な問題提起をしていると思われます。

私たち弁護士の仕事も、依頼者の方たちとの相談・打合せの形態、裁判所への出頭や書面の提出に関するIT化の進行、自宅業務の在り方など、今後に大きな変化が起こる予感があります。

一方安倍政権は、自殺者まで出した「森友」や「桜」の問題追及、アベノマスクを初めとするコロナ対策の度重なる不手際などで支持率が大幅下落し、それらから何とか国民の目をそらせるための国会閉会という「しばらくすれば国民はみな忘れる」といういつもの策を弄しています。しかし、検察庁をも自己の利益のために取り込もうとする企みを大きな反対のうねりでに廃案に追い込んだ国民のエネルギーの力強さには、「どっこい、捨てたもんじゃない」という久しぶりの気持ちの高まりを思い起こさせてくれました。

元法務大臣らの買収容疑での逮捕など次から次へと出て来る自公による腐敗政治の現象、日本を私物化している安倍政権に対して、その口癖である「責任を感じる」だけで終わらせず、「責任を取らせる」結果を何としても実現させたいものです。

未だ未だやり方によっては日本のしぶとい健全な力が引き出されると、期待と変化も感じさせられているこのコロナ期間です。

弁護士 梶山 敏雄

 

(事務所ニュース・2020夏号掲載)

 




沢尻エリカと彼(弁護士 梶山 敏雄)

沢尻エリカのMDMA0.09グラム所持が問題となっていますが、「これは『桜を見る会』の問題を隠蔽するために仕組まれたスキャンダルだ」という声がネット上で挙がっているようです。事の真偽は判りませんがいつもの事ながら何とも都合の良いタイミングで逮捕されるなー、とは思ってしまいます。

0.09グラムによる彼女に対する契約先等へのペナルティは数億円に上るようですが、我が国の権力者の多額の税金を自分や自民党の支持者獲得のために使うことには何のペナルティもないのでしょうか。自殺者まで出した森友・加計問題、文書や名簿廃棄の証拠隠滅、次々と起きる政治の私物化とも言える彼の振る舞いは、薬物による脳の障害と同じく「傲慢」という毒に侵された彼の脳が原因であり、改善することは不可能なのでしょうか。

薬物からの更生には刑事処罰ではなく医療上の対処が必要だと言われますが、少なくとも彼の振る舞いにはまず刑事処罰を与えなければ到底国民の納得は得られないでしょう。当たり前のことが当たり前に評価されることが、この国で納得して生活していけることの最低の保障条件ではないかと思います。

(いつも事務所ニュースを見て感想をくれて、昨年の私の誕生日のその日に逝った、飲み友達でもあったAさんに捧げます)

弁護士 梶山 敏雄

 

(事務所ニュース・2020年新年号掲載)

 




私の中の憲法(弁護士 梶山 敏雄)

空襲で両親を亡くした兄妹の物語り、NHK朝ドラ「なつぞら」で、終戦直後の生活苦で身売りを強制されそうになった少女を、公布されたばかりの憲法に「奴隷的拘束からの自由」という18条があるのを見つけた一警察官が、「憲法」を根拠に少女を保護したというセリフがあった。私が5才の時に蒸発した父親は魚店を経営していたが、最下級2等兵として2度もフィリピンに徴兵された。母親は「復員してきたら性格が全く変わって(すさ荒んで)しまった」と言っていた。これも「意に反する苦役に服させられない」という18条に反する徴兵制に関わることである。父親が倒産・蒸発した後の母子7人は憲法25条に基づく生活保護の生活であり、何とか進学できた高校の社会科教師が授業で決まって語る社会問題の話は、教育の自由(23条)を守ろうとする教師の意気込みが感じられた時期でもあった。「期待される人間像」などの文部省の道徳的教育の方針に反抗して、卒業生代表での「反戦答辞」をやって問題となったのはそうした影響があったからであろう。「大学自治」「反戦」などを巡る紛争で大学4年間の殆どは閉鎖されており、そのおかげでデモに参加しながらバイトにも精を出すことができてやっと卒業。貧しくとも表現・結社の自由(21条)・学問の自由(23条)をそれなりに感じることができた。当時知った狭山事件などの被差別部落や身近な人の在日差別問題、何度も観た映画「砂の器」でのハンセン病差別などなど、自分が体験した貧困による差別と同じように14条の「法の下の平等」や11条の「基本的人権の保障」に反する行為は許せないという思いがより強くなった。

そして埼玉総合に入所した約40年前、事務所の窓から見えた埼玉県庁には「憲法を暮らしに生かそう」という大きな垂れ幕が常に誇らしげに垂れ下がっていた。自分たちが守られてきたそうした身の回りの「憲法」はどこに行ってしまうのか。国民のささやかな生活・権利実現のための「憲法」を、強者には媚びへつらい、弱者に対してはこき下ろす安倍政権のオモチャにさせてはならないと、膨大な数の悲劇を生んだ戦争が終結した8月15日に思う。

弁護士 梶山 敏雄

 

(事務所ニュース・2019年夏号掲載)

 




大相撲(弁護士 梶山 敏雄)

実は昔から相撲が好きなんです。私のじいさん(菊次郎)が相撲が好きでしたがテレビが買えず、隣の家のテレビを2人で塀越しに覗いて一緒に歓声を挙げていました。
関脇が強い場所は面白いと言われますが、昨年秋の九州場所は小結・貴景勝がとても面白かった。突然に相撲界から姿を消した貴乃花の愛弟子です。勝っても負けても心の中がうかがい知れない表情が何とも言えません。その点では師匠を超えているかも知れません。
私の倒産没落した実家は、それでも昔の羽振りの良いときは地方巡業の勧進元をやっていたようです。地元福島出身の信夫山(時津山かも?)に抱っこされた私の2、3才の頃の写真がありました。横綱千代の山や巨漢・大起(オオダチ)が実家に泊まって風呂に入って出て来るとお湯が全部なくなったなどの話を亡くなった母親から良く聞かされました(若い人にとっては何を言っているのか判りませんよね)。白鵬・鶴竜そして稀勢の里までが休場という九州場所の大相撲。新旧交替の予感がしました。
伝統を守り引継ぎながらも、若い人達の感性でよりすばらしいものを創り上げていく、そんな場面を見ることができるのは幸せです。新しい年もそうした我が事務所の若人達の躍進・活躍の邪魔にならないように私もそれなりに頑張りたいと思っています。