【コラム】無駄な穴(弁護士 南木 ゆう)
昨年、「松代大本営」の象山地下壕を見に行きました。「松代大本営」とは、長野県松代市にある象山や舞鶴山を中心に、善光寺平一帯に作られた地下軍事施設群のことです。第二次世界大戦の戦況が悪化するなか、天皇や軍、政府の中枢機関をこの地下壕に移転して守るために、1945年8月16日に建設が中止されるまでの約9ヶ月間、過酷な掘削作業が進められました。日本人も多数動員されますが、地下壕掘削の中心的役割を果たしたのは、強制連行された6000人の朝鮮の方たちでした。強固な岩盤が爆撃にも耐えられるとして選ばれた松代の工事は、全て手持ちの削岩機とツルハシ、枕木にトロッコという手作業で行われたそうです。朝鮮人労働者は厳しい監督下で長時間労働を強いられ、食料も乏しく、事故や栄養失調で死亡したり、自殺をしたり、待遇改善などを要求して射殺された方もいて、犠牲者は300人とも、1000と人も言われていますが、戦後軍部等による関係資料の償却などによって、犠牲者氏名はほとんど不明です。1947年10月、天皇が松代を地方巡業した際、随行した長野県知事に対して、「この辺に戦時中、無駄な穴を掘ったところがあるというがどのへんか?」と聞いたそうです。
ヘルメットをかぶり、暗くてひんやりして薄気味悪い地下壕を歩きながら、戦争による加害・侵略の歴史を反省するとともに、今も戦争に向かう「無駄な穴」を掘っているのではないかと暗い気持ちにもなりました。
(事務所ニュース・2026年新春号掲載)
<今年の目標> 心身を整える