【コラム】若者が追い込まれない働き方を(弁護士 鈴木満)

厚生労働省が公表した令和5年度「過労死等の労災補償状況」では精神障害の労災認定数が過去最多とされています。「過労死等」とは、仕事が原因で脳心臓疾患を発症したり、精神障害を発病したりすることや、これらの病気が原因で亡くなってしまうことです。

精神障害について労災認定された年齢分布を見ると、10代から50代までの各世代の割合はおおむね同じになっています。私自身も30代の方の過労自死や精神障害の事件を複数担当しています。

過労死弁護団全国連絡会議が運営する過労死110番に寄せられるご相談の中にも子どもが働きすぎていて心配しているというご相談が度々あります。

私は、このようなご相談に対しては、万が一に備えて、お子さんの労働時間に関する記録やお子さんのご様子の変化の記録を残しておくことなどをアドバイスさせていただいています。万が一のことが起きて労働基準監督署に労災申請をしたとしても必ずしも実態に沿うような労働時間や働き方を認めてくれるわけではありません。時には、ご遺族が弁護士と協力しながら独自に証拠資料を集め、労働基準監督署に提出することもあります。
また、お子さんとよく話し合い、自分が今いかに危険な働き方をしているか認識してもらうことも勧めています。

将来のある若者が会社に酷使され、働けなくなる、あるいは、亡くなってしまうことは大変残念に思いますし、残されたご両親のご様子を見ていると、大変痛ましく思います。

若者が、やりがいと責任をもって働くことは素晴らしいことだと思います。しかし、会社がそれに甘んじ、労務管理を怠り、若者が追い込まれるようなことがあってはなりません。

弁護士 鈴木 満
(事務所ニュース・2024年夏号掲載)