アマミノクロウサギ(弁護士深谷直史)

奄美大島の自然と文化を紹介する三部作、第一弾です。

昨年になりますが、休暇をとって奄美大島に行ってきました。

海がきれいで天気も快晴、吹く風が気持ちよい、素晴らしい旅行になりました。

見どころたくさんの奄美大島ですが、お目当てはアマミノクロウサギ

アマミノクロウサギは日本固有種のウサギで、南西諸島の奄美大島と徳之島にしか生息していません。ウサギにしては小さい耳と真っ黒な体が特徴です。森の中で穴を掘って巣作りをしているため、かわいらしい顔に似合わず、手足には鋭い爪を持っています。

ウサギの仲間のなかでも最も原始的な体型をしていることから、「生きた化石」とも呼ばれています。

アマミノクロウサギ
アマミノクロウサギ

特徴には個体差があり、上記写真の個体は手の先が白っぽい

大正10年に国の天然記念物に指定され、特別天然記念物(動物だと現在21種が指定、文化財保護法第109条2項)にもなっている、世界的に見てもとても希少な生物です。ただ、絶滅危惧種でもあり、近年では個体数の減少が続いていました。

なぜ絶滅危惧種となったのか?

その理由が、ハブの駆除を目的に導入されたマングースです。

ハブ
ハブ

ハブは猛毒を持つ恐ろしい毒ヘビで、奄美大島や沖縄本島をはじめとした南西諸島にのみ生息する日本固有種です。人間がハブを恐れて山に入らなかったため、奄美の自然が守られているのもハブのおかげとも言われています。奄美の生態系のトップに君臨するハブですが、人間はハブの駆除のためにマングースを導入しました。

マングースはインド辺りに生息しているイタチの仲間です。小さな体で可愛らしい見た目をしていますが、性格は凶暴な肉食獣です。ある東大教授が海外視察中に、マングースがコブラ(これも怖い毒ヘビ)と闘うショーを見てしまったことをきっかけに、マングースがハブの退治に役立つと思われてしまい、日本の南西諸島にも導入されたのです。

奄美大島には、もともとクマやイタチなどの肉食哺乳類が存在しません。哺乳類はウサギやネズミなど、みんな草食で夜行性なのです。みんな争わず仲良く暮らしていた中に、肉食獣のマングースが入ってきたものですから、希少種の哺乳類や鳥類がたちまち餌食になります。マングースもハブが怖いですから、ハブなんかわざわざ狙いません。

このマングースの導入により、奄美の生態系バランスが崩れ、アマミノクロウサギの生息数も減少し続けたのでした。

アマミノクロウサギの個体数回復

反面、マングースはどんどん数を増やしていき生息域も広げていきますが、奄美の自然を守るため駆除されるようになりました。もともとは人間の都合で奄美に来てしまったのに、何だかかわいそうです。

地道な防除活動の甲斐があって、近年では奄美大島でマングースの生息が確認されていません。2024年9月には、奄美大島におけるマングースの「根絶宣言」も出される予定だそうです。沖縄本島など、マングースが導入された地域は数多くありますが、完全な防除が完了した地域は世界でも珍しいケースです。

マングースの根絶が実現できたおかげなのか、アマミノクロウサギの生息数は増加傾向にあります。

私も、一晩で30羽近くのアマミノクロウサギに会うことができました。希少生物と聞いていたので、意外とたくさんいてびっくりです。

アマミノクロウサギの観察

野生のアマミノクロウサギを観察するのにおすすめなのが、ナイトツアーです。仕組みはとてもシンプルで、奄美の自然を知り尽くしているガイドさんと一緒に軽自動車に乗せられて、奄美の山道を散策するというものです。奄美大島では、ガイドさんに独自の認定制度を設けており、奄美の自然環境保全のための知識を市民に広める活動をしています。

私も認定ガイドさんのツアーに参加しましたが、とにかく話が面白い!観察スポットを知り尽くし、奄美のジャングルを一緒に探検することができます。奄美の自然や歴史への大きな愛を感じることができました。そのガイドさんは、ハブに9回噛まれたことがあるそうで、傷跡の写真も見せてもらいましたが、ハブに噛まれるととても痛そうです。

ジープに乗せてもらって探検をするナイトツアーもあるようですが、車の騒音がうるさく野生動物を遠ざけてしまうこともあるようですので、ご注意を。認定ガイドさんのツアー、おすすめです。

ハブとマングースの生態は、奄美観光ハブセンターで学ぶことができます。展示がとってもユニークで、面白いです。一生使うことはないでしょうが、ハブの捕まえ方も勉強できます。

ぜひ、アマミノクロウサギに会いに行こう!

弁護士 深谷 直史