【コラム】事務所ニュース 2024年新年号 巻頭挨拶(弁護士 伊須慎一郎)

埼玉総合法律事務所は、昨年50周年を迎え、250人の関係者の方にご参集いただき、11月17日に無事レセプションを開催することができました。改めて、御礼申し上げます。

一昨年に事務所の創設者宮澤洋夫弁護士、創成期の中心メンバーだった城口順二弁護士が亡くなりました。事務所の構成メンバーも大幅に変わりましたが、変わらない事務所の役割があるのではないか、その役割を果たすことができるよう、所員一同励みたいと考えております。

ところで、2023年12月5日に、仙台高裁第2民事部が、集団的自衛権の行使を容認した平和安全法制につき、「従来の政府の憲法解釈を明らかに変更するものであって・・・憲法9条1項の下で許される武力の行使の限界を超えると解する余地もある・・・しかし・・・国際法上の集団的自衛権の行使が全体として憲法上容認されるという見解が示されたものではないとして、違憲性が明白であると断定することまではできない」という、非常に歯切れの悪い、不可解で不当な判断を下しました。仙台高裁は、自衛権行使の新3要件が限定的であり、厳格かつ限定的な解釈を示した政府の国会答弁も踏まえると、違憲性が明白であると断定することはできないと述べています。

しかし、政府は新3要件に従って厳格かつ限定的に「存立危機事態」等を認定できるのでしょうか。

自衛隊が防衛出動し、米軍と共に武力を行使する場合、自衛隊は米軍の指揮下に入ると言われています。日本政府は、米政府・米軍から自衛隊の出動を要求されて、「ノー」と言えるのか、米国の戦争に沖縄を含めた南西諸島の住民が真っ先に巻き込まれないか、裁判官は、新3要件が限定的かどうかという政府の詭弁ではなく、憲法9条の理念、戦力を保持しないという文言、日本国の置かれた状況等を踏まえ、真摯に憲法判断すべきでした。

2024年は、いよいよ平和憲法の正念場です。埼玉総合は、皆様と共に微力ながらも力を尽くしたいと考えています。

弁護士 伊須 慎一郎

(事務所ニュース・2024年新年号掲載)