【コラム】誰もが平和を享受できる社会を(弁護士鈴木満)
昨年、日本政府が提出した出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正法案が廃案となり、本年1月に改正法案の再提出が見送られましたが、今秋の国会において再び政府から改正案が提出される可能性があると言われています。
政府は、ウクライナから逃れてきた人たちを、「避難民」と呼び、難民条約上の「難民」に該当しないことから、「準難民」制度を設けることで、「難民に準じて」保護することができるかのように説明しています。
しかし、難民条約の解釈に関する国際的なガイドラインに従えば、ウクライナから逃れてきた人たちを難民として保護することは可能であると言われています。
政府は、難民条約上の「難民」の要件の解釈を極端に狭くしています。このことは、他国と比較しても著しく低い、日本の難民認定率の低さに現れています。このような解釈の結果、ウクライナから逃れてきた人たちを難民として保護できないにもかかわらず、あたかも、政府案によって保護が可能になるかのように説明することは、説明として妥当なものではありません。
昨年廃案となった政府案は、難民保護に反するおそれのある内容を含んでいましたが、政府は、ウクライナから逃れてきた人たちのことを名目に、この改正案に修正を加えずに、再提出する可能性もありますので注意が必要です。
ただし、現在の日本の制度でも難民が十分保護されているとは言えません。難民認定率は著しく低く、何度も難民申請をして、何年もかけて、ようやく難民として認められるような事例もあります。
政府は、日本国民が平和に暮らせる社会を作るだけでなく、平和な生活を求めて、戦火や迫害から日本に逃れてきた人たちの権利も適切に守る社会を作るべきです。
(事務所ニュース・2022年夏号掲載)