【コラム】もし自分が同じ立場だったら(弁護士月岡朗)

弁護士として働くなかで「もし自分が同じ立場だったら…」と想像することがあります。精神障がいのある方が,強制入院を強いられて「退院させてほしいのです。」と相談してきた時は,そのような想像をした場面のひとつです。
日本は,精神障がいのある方が精神科病院へ入院する場合に,諸外国に比べて,①本人の同意のない強制入院の割合が多く,②入院期間も非常に長いという問題があります。

まず,①強制入院の割合については,EU諸国では強制入院の比率が平均10%台であるのに対して,日本では2020年6月30日時点で,入院者約27万人のうち,約48%にあたる約13万人が強制入院である医療保護入院です。(医療保護入院とは本人の同意なしに,医師の診察と家族等の同意等で入院させる入院形態です。)日本の強制入院の割合の高さは突出しています。次に,②入院期間についても,精神科病院の平均入院日数は,2017年の統計によると,OECD加盟国の多くが40日を超えていないにもかかわらず,日本では260日を超えております。約7倍の入院期間です。また,厚生労働省の調査によれば,2017年の入院者約27.8万人のうち,5年以上の長期入院が約9.1万人(約33%),10年以上の長期入院が約5.4万人(約19%)となっています。また,「受け入れ条件が整えば退院可能」とされている方は約5万人に上ります。

このような強制入院制度は,対象となった方の人生に決定的かつ重大な影響を与えます。人格,名誉を傷つけ,地域で等しく教育を受け,また,人を愛し愛され,働き,家族をもつなど,人生の選択の機会が損なわれます。
2021年10月15日,日本弁護士連合会は,第63回人権擁護大会において「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」を採択し,強制入院の廃止を目指すこととなりました。
どうか,ご理解とご支援を頂ければと思います。

弁護士 月岡 朗