反貧困全国集会2021集会宣言「生きてくれ」-コロナと貧困-

 2021年4月4日(日)、反貧困ネットワーク主催の「反貧困全国集会2021」が開催されました。2007年にスタートして以来、14年目となります。
 全国の地域での取組、ひとり親・女性・非正規雇用・学生・外国人など、当事者や支援の現場からの声や取組が報告されました。
 貧困と格差の拡大が放置され、「コロナになってもならなくても死ぬ」人がいる社会、「コロナで死ぬことより、いかに毎日を生き抜くか」を考えるほかない社会、そんな今の社会のままで、感染の拡大は止められるのでしょうか。

 当日、採択された集会宣言をご紹介します。

反貧困全国集会2021集会宣言「生きてくれ」-コロナと貧困-

 2008年、リーマン・ショックが到来しました。非正規労働者が、雇用の調整弁として、解雇・雇い止めされ、仕事や住居を喪失し、生活保護の窓口から追い返される人も相次ぐなど、生存の危機に瀕する人が全国にあふれました。私たちは、派遣村の取組を行い、人間のいのちや暮らしより経済や大企業の利益を優先して非正規雇用を拡大させてきた政策の転換、自己責任を振りかざして社会保障の縮減を進める政策の転換を求め、取組を続けてきました。

 そして、2020年、コロナが到来しました。3月から4月、非正規雇用がまっ先に切り捨てられ、非正規労働者数は131万人減少。相次ぐ解雇・雇い止め、休業手当不払い。休業を余儀なくされ収入を絶たれた自営業者・フリーランス。住民でありながらセーフティ・ネットのない外国人。「仕事がない」「収入が激減した」「所持金が尽きた」「住居を失った」「大学に通えない」など、短期間で一気に追い詰められた人からのSOSが続きました。コロナは第2波、第3波、そして第4波へと続き、失業が長期化する中で、求職活動に疲れ自己肯定感を失い、孤立を深める人が増えています。自殺者数は昨年7月から増加に転じ、10月には前年同月比で39.9%増、うち女性が82.6%増となり、年が明けた2月、女性の非正規労働者数は前年同月比で89万人減少し、減少幅は過去最大になっています。危機にあって、最後のセーフティ・ネットとして役割を発揮すべき生活保護は、窓口の誤った対応、扶養照会に伴うスティグマなどにより本来の役割を発揮できていません。

 同じことの繰り返しです。不安定な雇用と穴だらけの社会保障に対し抜本的な手当をしなければ、こうなることは当然でコロナの前から見えていたことです。手当をしなかったばかりか、非正規雇用をさらに拡大させ、生活保護バッシングを誘導するなどして生活保護基準を引き下げるなど社会保障の縮減を続けてきたので、状況は一層悪化しています。そして、政治は、生きることができない人が続出している状況を目の前にしても、今もなお、「自助・共助」と言い続け、その場凌ぎの小手先の対応を繰り返し、また、経済や大企業優先の政策を続け、コロナ禍にもかかわらず株価が30年ぶりの高値となって大企業等の富が膨張するなど、貧困と格差を一層拡大させています。

 今日の集会では、全国の地域での取組、ひとり親・女性・非正規雇用・学生・外国人など、当事者や支援の現場からの声や取組が報告されました。「コロナになってもならなくても死ぬ」「コロナで死ぬことより、いかに毎日を生き抜くか」を考えるほかないという日本社会の現実があります。このままでは、運良くコロナが収束したとしても、その後に続く大災害やパンデミックを乗り越えることは困難です。今こそ、互いに分かち合い、支え合う、希望と連帯の社会への転換が必要です。
 反貧困ネットワークが呼びかけた「新型コロナ災害緊急アクション」、「反貧困緊急ささえあい基金」の取組には、多数の市民団体、労働組合などが参加し、現場での駆けつけ支援、いのちを繋ぐ取組が続いています。地域からの個別領域を越えた連帯の社会運動をさらに強化するため、反貧困ネットワークは、本日の集会を機に、当事者が主体者として参画する「社会運動としての連帯協働組織」へと新たな一歩を歩みだします。
 地域から、分かち合い、支え合い、個別の問題の枠や、民間と行政などの立場を越えて、互いにつながり、「生きさせろ!」と声を上げ、「生きてくれ」の声を届けましょう。人間らしい生活と労働の保障を求め、希望と連帯の社会をつくるため、私たちは、これからも声を上げ、つながりを広げ、行動することを宣言します。
2021年4月4日
反貧困全国集会2021参加者一同

集会のアーカイブ録画はこちら https://youtu.be/Ic9OC571Y_c

弁護士 猪 股  正